入学時における本学学生の体格・体力に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
昭和47年に入学した本学の18才の学生の体格は身長では全国平均値より高い値を示しているが,体重は全国平均値より低くなる学部が増加している。また,19才の学生は経済・経営学部の体重のほかは身長・体重とも全国平均より高い値を示している。教育学部女子の体格は身長・体重とも全国平均よりもわずかであるが劣っている。学部間の比較をすると工学部が最もよく,ついで経済・経営学部,教育学部の順位となっているが,本学入学者の特色が工学部,経済・経営学部の学生は東京都,神奈川県など大都会の出身者が比較的多いのに対し,教育学部の学生は地方出身者が他学部より多いためと思われる。現役入学者と浪人入学者の関係では全国平均と同様に浪人入学者のほうが体格がよく,体格面での影響はみられない。また,全国平均と比較すると本学の学生は身長に比較して体重がやや劣る傾向にある。運動能力テストの結果を考察すると,本学の学生が全国平均値より上まわった種目は男子では工学部18才の50m走だけである。また,女子では懸垂の1種目が全国平均より高いだけで,その他の全ての種目で本学の学生は全国平均値より劣っていることは注目すべき点である。50m走は筋肉や内臓諸器官が短時間内に最高能力を発揮することを要求されるわけであるが,走行距離と所用時間が短いため現在の学生の体力でもカバーできるようである。長距離走では筋力やパワーを調子よく持続的に保持しながら,呼吸・循環機能との関係も密接になってくるため体力のないものにとっては記録が大きく低下するものと思われる。したがって本学学生の持久走の記録の低下はこの理由によるものと考えられる。走り幅とび,ハンドボール投げは瞬発的な運動の示す最大の跳力,投力の大きさをあらわすものであり,単位時間における仕事率を意味するが,我々の日常生活の中で走力と同様に重要な働きをしているものである。本学の学生はこのような瞬発的に全身動作を行なう筋のパワーも全国平均値よりやや劣っている。[figure]上腕筋力は背筋力についで体力と密接な関係にあるといわれているが,この面でも全国平均値よりやや劣っていることがわかる。本学に入学した現役入学者と浪人入学者の運動能力の差はあまりなく,浪人することによって運動能力に大きな影響を与えるようなことはないようである。運動能力テストについて要約すると,大概次のようである。(1)本学に入学した学生の運動能力は各学部とも全ての測定種目で劣っている。(2)運動能力は筋系の働きによることが大部分であるが,筋肉は適当な運動負荷を与えることによって,筋力の大きさを増大させることが出来るので体育実技の授業時に学生の運動能力の実態に応じた指導が必要である。(3)本学学生の運動能力が欠けている点は筋持久力であり,呼吸・循環機能の強化をはかることが重要である。(4)浪人入学者は受験勉強によって,一年以上の身体運動から遠ざかった空白の時間があるので,現役入学者より運動能力が劣るのではないかとの仮説のもとに測定を行なったが,その差はあまりみられず,身体活動面での大きな影響はみられなかった。(5)平均値からのばらつきは全国平均値と比較して大きくかけはなれた種目はなく,全国平均とほぼ似た数値になっている。反復横とびは身体の重心の移動が大きい大筋活動による敏捷性のテストであるが,本学の学生は全国平均値よりやや劣っている傾向がみられる。垂直跳びは瞬発的な筋力を測定するテストであり,運動能力テストの走り幅とびと関連のある測定種目である。垂直とびは走り幅とびと同様に全ての年令と学部で全国平均値より劣っており,この両者が関連していることが明かなようである。背部の筋には浅背筋と深背筋があり,背筋力はこれらの〓間伸筋の外臀筋群や下肢伸展筋・手指屈筋等の共働作用であり,良い姿勢の保持や諸作業を遂行する上で重要な役割をはたしている。また,握力は手指の示指から小指までの4本の指の屈筋の共働最大筋力を測定するものであり,屈筋力としての握力と伸筋力としての背筋力は筋力測定の代表的なものである。本学の学生を測定した結果では伸筋力である背筋力は全国平均より低い値であるのに対し,屈筋力をみる握力では背筋力とは逆に全国平均より高い値を示している。このような結果がでた原因は明らかでないが,今後の研究課題となろう。日常生活を営む上から,また各種の運動を行なうことからも身体が柔軟であることは極めて重要な要素である。伏臥上体そらしや立位体前屈の測定はこの意味から重要な測定である。測定の結果では伏臥上体そらしは全国平均値より優っているのに対して,立位体前屈は逆に劣っている傾向がみられ,筋力と類似していた。呼吸機能と密接な関係をもつ循環機能の測定は,持久性の大小をみるための重要な検査として用いられているが,本学の踏台昇降運動の結果は普通程度の回復力であった。体力診断テストの結果を概括すると男子では瞬発力,柔軟性の立位体前屈,敏捷性の反復横とびで体力が劣っている点がめだっている。それに反して,握力,伏臥上体そらしではかなりの好成績をあげている。女子では握力,伏臥上体そらしでわずかによい結果を示しているがそのほかの5種目では全国平均より劣っている。現役入学者と浪人入学者の関係をみると立位体前屈で現役がよく,握力,伏臥上体そらしでは浪人の方が高い値を示している。またその他の種目ではまちまちの結果がでており,現役と浪人の明瞭な差はみられなかった。年令別・学部別の測定項目数,49項目に対し全般に本学学生の体力診断の結果はあまりよいものではない。しかし,大きな差で劣っている項目は少ないので今後の指導によっては十分全国平均値まで接近させることが可能である。
- 1973-10-31
著者
関連論文
- 入学時における本学学生の体格・体力に関する研究
- 体育科専門スキー実習の理念
- 駅伝競走における疲労調査とコンディショニングに関する研究(第3報) : 青森-東京間駅伝競走について
- 駅伝競走における疲労調査とコンディショニングに関する研究(第2報) : 青森-東京間駅伝競走について
- 駅伝競走における疲労調査とコンディショニングに関する研究(第1報) : 青森-東京駅伝競走について
- 学童期の水泳が健康に及ぼす影響(第一報)
- 大学生の入学時と一年後に於ける体格並びに運動能力の比較研究
- 生体比重(Spisific gravity)と筋力の関係 : ((ΣM.F)/W)
- 18. 水泳実習における疲労に関する研究 (第2報)
- 水泳実習における女子学生の疲労調査成績
- 86. Skill の研究における Adaptability について (2)
- 学生の運動と栄養に関する研究(第1報) : 運動実施状況,血中脂質および栄養調査について
- 9049 「水泳初心者指導法」 : 呼吸法の取扱い方について
- 体育科学生の体力と健康度について
- 水泳指導法の実験的研究
- 361. 夏期水泳実習における体力医学的研究
- 250. 筋力調節能力についての研究
- 大学入学時の体格並びに運動能力の比較研究
- 体育運動における恐怖心 その1
- 水泳推進力と手掌面積, 足掌面積の関係について
- 生体比重測定からみた鍛練者,非鍛練者の体力科学的分析
- 大学入試前後における学徒の体力科学的研究
- 生体比重の測定
- 駅伝競走におけるコンディショニングについて : 7.体育管理に関する研究
- 走高跳の技術についての一考察
- 中高年令長距離走者の実態および意識調査とその考察について
- 大気汚染が体格体力に及ぼす影響に関する研究 : 11.発育・発達に関する研究
- 身体運動における恐怖心の実験的並びに調査的研究