トマトの色素に関する遺伝学的・生理学的研究(II) : 劣性同型接合体rrtt系, 黄橙色トマトの育成
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概要
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前報において, 筆者らは, 橙色系トマト(RRtt)のカロテン色素に, プロ-γ-カロテンと思われるシス型のγ-カロテンが含まれることを初めて明らかにし, トマトカロテンの生合成において, プロ-γ-カロテンの新しい合成経路が存在し得ることを提示した.したがって, 他のtt-劣性型トマトについても, さらに詳細な検討が必要となった.そのため, 筆者らは, 入手困難な劣性同型接合体rrtt系黄橙色トマトの育成を行った.本報においては, 遺伝子型rrtt系の育成経過, ならびに育成された各系統の遺伝子型と果色を中心とした果実特性との関係について報告した.1.育成母系として, 橙色系(RRtt);Jubilee(Jub), 黄色系(rrTT);Golden Queen(GQ)そして赤色系(RRTT);Moneymaker(MM)およびRed Cherry(RC)の4品種を供試した.2.GQおよびJubについて自殖3代の後代検定の後, GQにJubを交雑した.そして, F_2世代において, rt表現型を選抜した.このrt系について選抜を重ね, 自殖3代後rt(S_3)を得た.3.このrt(S_3)は, GQおよびJubとの検定交雑と, その後代における形質分離の解析によって, 遺伝子型が劣性同型接合体rrttであることを確認した.すなわち, F_1の表現型は, GQまたはJubの形質を常に表現し, F_2の分離比は理論分離比とよく適合した.4.また, MM×rt(S_3)およびRC×rt(S_3)の交雑から, 上記と同様の方法によって, MMおよびRC由来の劣性ホモrrtt系;MM-rtおよびRC-rtを得た.同時に, RRtt系;MM-ttおよびRC-ttと, rrTT系;MM-rrおよびRC-rrも育成した.5.色差値L, aおよびb値には, やや変異がみられたが, a/b値は, 果色によって明確な差がみられた.すなわち, 黄色系(rT), 黄橙色系(rt), 橙色系(Rt)および赤色系(RT)トマトのそれぞれの値は0.2〜0.4,0.4〜0.7,0.8〜1.2および1.5〜2.0であり, このような明確な類別は, トマトの果色に関する育種の過程において, 様々な果色変異個体のより合理的な選抜を可能にした.また, 育成された種々の系統の色差や, 果重および成熟期などの果実特性についても検討した.
- 鹿児島大学の論文
- 1986-03-15
著者
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