軟体動物殻体真珠屑形成の分子機構の解明(研究科分,平成15年度麻布大学公的研究助成金事業研究成果報告)
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概要
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本研究課題では,真珠層形成機構を分子レベルで明らかにするために,これらの分子の構造をウグイスガイ科を中心とした軟体動物の異なる系統間で比較し,構造の保存性に関する情報を基に分子の機能の推定を試みた。さらに,結晶形成実験を基に,3種類の真珠層形成タンパク質の機能解析を行って,分子の構造から推定される機能の検証を試みた。その結果,ナクレインのCA活性部位とN16のsulfation部位の保存性が高い反面,両成分中に存在するNG繰り返し配列部位の保存性が低いことが明らかになった。また,MSI60は,分子全体に渡って極めて保存性の高いことが明らかになった。結晶形成実験からは,ナクレイン,N16ともにアラレ石結晶の形態を制御するものの,結晶形の決定には関与しないと考えられた。これに対してMSI60は,これが存在しないと結晶の層状成長が起こらないものの,結晶形態や結晶形の制御などには関与していないことが判明した。殻体真珠層は,1)石灰化の場の形成2)カルシウムイオンと炭酸イオンの濃集3)炭酸カルシウム結晶核の形成4)結晶形の制御の各段階を経て形成される。上記の結果を基に筆者らは,真珠層形成機構を以下のように考察した。まず,石灰化の場が,MSI60を主体とした不溶性の膜により形成され,続いて,炭酸イオンとカルシウムイオンの石灰化の場への濃集が,ナクレインのCA活性部位とN16のsulfation部位の働きによって計られる。過飽和状態となった膜上で,炭酸カルシウム結晶核の形成がtemplateの働きによって起こり,この結晶核が次第に成長して,真珠層に特有の板状の形態を持つようになる。この結晶形態制御は,ナクレインとN16分子中に存在するNG繰り返し配列部位の結晶表面への吸着により遂行される。これまでに報告された10数種類の軟体動物殻体形成に関与する成分の中で,templateに相当する明確な特徴を持った成分は発見されていない。アコヤガイ真珠層中からObaraら(M.S.)により発見されたMSI25に結晶核形成を誘導する構造上の特徴が見出された。MSI25は,N末端領域に集中する酸性アミノ酸領域にカルシウムイオンを結合し,分子中に3回出現する塩基性アミノ酸領域に炭酸イオンを結合し,この2種類のイオン同士のイオン結合により炭酸カルシウム結晶核を誘導する可能性がある。この成分の機能については,現在,結晶形成実験により検証を進めている。
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