他者との関連における"自己" : 幼児の共感的行動に関して
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概要
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本研究の目的は,"喜び"の情緒に関して,元型(内的状況)と顕型(表情)が比較的一致しやすい単純事態と必ずしも一致するとは限らない複雑事態における幼児の共感的行動について検討し,さらに,複雑事態においては,示範効果との関連で分析することである。そのため,保育所児143名を対象として,2つの状況における各ストーリーの起・転・結を示す3枚の絵から構成した刺激図版に対する主人公の表情図版([○!笑]・[○!泣]・[○!怒]・[○!普])を選択させた。また,複雑事態においては,類似した別の状況における主人公の母親の表情を観察させた後,再び主人公の表情の選択を求めるという手続をとった。さらに,母親に対する一般的反応傾向を測定するために,母子図版(母親の4種類の表情に対する主人公の表情選択)を施行した。おもな結果は,つぎのとおりである。1.単純事態と複雑事態の2つの状況における共感的行動についてa.単純事態においては[○!笑]反応が多いが,複雑事態においては[○!笑]・[○!泣]・[○!普]と分散して,2つの状況での共感的行動に相違が認められる。b.単純事態において,年長児は[○!笑]反応が多く年少児では反応が若干分散して生活年齢差が認められるが,複雑事態においては,年長・年少ともに同様な傾向で反応が分散して相違が認められない。c.2つの状況のいずれにおいても,性差は認められない。2.複雑事態における共感的行動への示範効果についてa.共感的行動に対するモデル(主人公の母親)の観察の影響(示範効果)について,モデルの表情(示範内容)による相違があり,[○!笑]条件では示範効果が認められやすいが,[○!泣]条件では認められにくい。b.示範効果が認められた者の場合は,母子図版においてモデル(ただし,示範内容のみ)と主人公の表情を一致させ,効果のない者の場合は,その反対の傾向が認められる。c.性および生活年齢の条件による示範効果の相違は認められない。
- 1983-03-31
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