幼児の語順ストラテジー
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概要
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語順ストラテジーは,「深層で同一の文に属する表層の連鎖『N-N-V』は,『行為者-対象-行為』という格関係に対応する」と定義されている。鈴木(1977)は,倒置文,受身文,分裂倒置形では4歳後半において,語順ストラテジーが優勢であることを見出している。また,格ストラテジーは,岩立(1980)によって提出されたもので,「最初の名詞句が動作者(格)と優先的に解釈される傾向」と定義され,その存在が実験によって検討されている。本実験では,次の2点を検証することを主たる目的としている。1.語順ストラテジーの存在と優勢な年齢について調べ,鈴木の結果と比較する。2.格ストラテジーの存在を検証する。被験児は,ITPAの下位検査によって標準言語能力を持つと判断された3,4,5歳児である。これらの被験児に,個別に動作実験を行った。すなわち,刺激文7文(正序文,倒置文,受身文,分裂正序形,分裂倒置形,助詞無し文,異常文)を聞かせ,両手に持った人形で動きを示すというものである。その結果,刺激文の理解度は正序文>倒置文>分裂倒置形>受身文>分裂正序形という順に減少した。これは,鈴木の結果とほぼ一致し,幼児期における単文の理解度を表している。次に,語順ストラテジーについては,正序文の正反応率と倒置文の正反応率の差を求め,同様にして受身文,分裂倒置形についても求めたところ,倒置文では4歳以降に,受身文では3〜5歳に語順ストラテジーが認められた。しかし,分裂倒置形では語順ストラテジーの存在は認められなかった。さらに反応パターンを分析することによって,受身文において語順ストラテジーが優勢であることが明らかとなり,鈴木とほぼ一致した結果が得られた。また,格ストラテジーについては,意味関係の成立している文型について,このストラテジーを用いた反応は,全被験児の13%にすぎないことが明らかになった。さらに,意味関係の成立していない文型においても,格ストラテジーを用いた反応は認められなかった。したがって,格ストラテジーの存在は否定された。
- 千葉大学の論文
- 1984-12-20
著者
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