Phalaenopsis chibae : ベトナム産ラン科の一新種

概要

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ベトナムに自生するラン科の1新種,phalaenopsis chibae Yukawaを記載する。1994年5月,ベトナム,ダラット付近,海抜400-600mで故千葉雅亮氏が発見した植物の同定を依頼された。4個の花粉塊,唇弁が形成する距,これら2つの形質から,この植物がPhalaenopsis section Deliciosaeに所属することは明らかである。しかし,分枝せず直立する花序,1花序上で開花を繰り返さない性質,花の間隔が疎であること,芥子黄色に栗色の斑紋の入る花色,横長楕円形の唇弁中裂片,小さな三角形の唇弁側裂片,はぼ四角く両端が隆起する唇弁中裂片のカルス,以上の形質の組み合わせにより,これまで記載されたPhalaenopsis section Deliciosaeのいずれの種からも区別され,新種と判断した。なおPhalaenopsis section DeliciosaeをPhalaenopsisから分離し,Kingidiumという別属を設ける見解もある。しかし,section Deliciosaeを除くPhalaenopsisに共有派生形質を見出せないため,この処置は分類学的整合性を欠く可能性が高く,支持できない。
国立科学博物館の論文
1996-12-25