肝・膵十二指腸同時移植(クラスター手術)の実験的研究

概要

論文の詳細を見る
肝臓・膵臓を含む多臓器を同時に移植する「クラスター手術」では,未解決の多くの問題がある。この手術の技術的可能性を左右する因子を検討するため,以下の実験を行った。雑種成犬20頭を用い,ドナーより肝膵十二脂腸を一塊に摘出し,レシピエントに同所性に移植した。グラフトの機能評価のため,一般血液検査,動脈血中ケトン体比(AKBR),肝組織血流量を測定した。免疫抑制剤はシクロスポリンとミゾリビンを投与した。レシピエント10頭中,6頭は1日以内に死亡(1群),4頭は3〜370日生存(2群)した。移植後3時間のAKBRの平均は,1群で0.47±0.11,2群では0.97±0.13を示した(p<0.05)。術後肝組織血流量は,1群で全例が術前値以下に対し,2群では4頭中3頭が術前値を上回った。移植肝のprimary nonfunctionが早期死亡原因と考えられ,クラスター手術でのAKBR,肝組織血流量の測定は,移植肝のviabilityの評価に有用であった。
北里大学の論文
1992-10-31