肝移植無肝期におる静脈系バイパスの効果についての基礎的研究

概要

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同所性肝移植では,自己肝摘出時,門脈・下大静脈の血行速断が行われ,無肝期の血行動態の変化は著しい。この無肝期を安定させることが手術を成功させる鍵となっており,Bio-pumpを用いたバイパス手技が開発され,臨床肝移植の成績を向上させている。我々も臨床肝移植を開始するに当たって,無肝期の静脈系バイパス手技を含む手術手技の確立は不可欠と考え,以下の実験を行った。実験は,雑種成犬を用い,肝摘出を行わない無肝期バイパスモデルを作成した。下大静脈と門脈血行遮断の後,静脈系バイパスを留置し,Bio-pumpによる強制灌流を行い,血行循環動態と酸素需給動態の変化について,バイパスの効果を検討した。術中,心電図・動脈圧・血液ガス・Swan-Ganzカテーテルによるモニター・測定を行った。下大静脈および門脈血行遮断で,心係数・動脈圧・1回拍出量・左室1回仕事量・中心静脈圧の低下,体血管抵抗・肺血管抵抗の上昇がみられ,また動静脈血酸素含量較差の拡大,分時酸素供給量・分時酸素摂取量の低下に対し,分時酸素摂取率の増加がみられた。とくに門脈血行遮断でその変化は大きかった。これに対し下大静脈と門脈から頸静脈へのバイパスを留置し,Bio-pumpによる強制灌流を行った結果,これらの変化は著明に減少した。バイパス流量と心係数との関係は,Y=1.738+0.0257X, r=0.613の正の相関が得られ,また各パラメーターについて,バイパス流量を十分上げる(40ml/min前後)ことでコントロールに近い値が得られた。無肝期に静脈系バイパスを留置し,Bio-pumpによる強制灌流を行う手技は,術中の血行循環動態と酸素需給動態を安定させることが判明し,この手術手技により安全・確実な肝移植手術が出来ると考えられた。
北里大学の論文
1991-02-28

肝移植無肝期におる静脈系バイパスの効果についての基礎的研究

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