重症腹膜炎の病態および治療に関する臨床研究 : エンドトキシン・サイトカインの役割

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ショックを伴う重症腹膜炎23症例における血中エンドトキシン, サイトカインを測定した。高エンドトキシン血症 (≧10pg/ml) は20.0%に認められたのに対し, 高サイトカイン血症は, IL-6 (≧1000pg/ml) で80.0%, IL-1β (≧10PG/ml) で55.5%に認められた。腹膜炎症例では, 腹水中ではすでに高エンドトキシン・高サイトカインの状態に陥っており, より分子量の小さいサイトカインの方が血中に流入しやすいことが推測された。また, 血中IL-1βが50pg/ml以上の高値を示した症例では, 6例中5例 (83.3%) が死亡するなど, 血中エンドトキシンより血中サイトカインが腹膜炎の重症度をよく反映しており, 予後と相関していると考えられた。一方, ポリミキシン固定化カラムによる血液灌流療法 (以下, PMXと略す) をこのようなショックを伴う重症腹膜炎15症例に施行し, その前後でサイトカインの変化を測定した。PMXによりほとんどの症例で平均血圧の上昇, 時間尿量の増加など循環動態の改善が得られた。さらに, 血中エンドトキシンの高値のものは低下していた。また, PMX実施の有無によるIL-6の変化は, PMX施行例で早期にIL-6の低下が得られた。IL-1βも, 救命例ではPMX施行後より低値を示した。しかし, 感染巣残存例ではPMX後IL-6は一過性に低値を示し翌日再上昇したのに対し, IL-6に先行して産生されるとされるIL-1βはPMX後より上昇し, その翌日にはさらに上昇した。以上の所見より, 重症腹膜炎に対するPMXの実施は, 血中エンドトキシンを除去するのみならず, IL-1βからIL-6に至るまでの内因性物質を除去し, ひいては早期にIL-6の低下をもたらし, 病態の改善に寄与している可能性が大きく示唆された。
神戸大学の論文
1999-03-31

重症腹膜炎の病態および治療に関する臨床研究 : エンドトキシン・サイトカインの役割

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