遠心ポンプ(Bio-pump)を用いた補助循環法に関する研究 : とくに左心バイパス法からの検討
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概要
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遠心ポンプ(Bio-Pump)を用いた左心バイパス法(Leftheart bypass,LHB)による補助循環が心機能,末梢循環並びに血液成分等に及ぼす影響について実験的に検討を加えた。さらに,胸部下行大動脈癌及び胸腹部大動脈瘤手術時の補助手段としてLHBを使用した臨床例を呈示し,その有用性についても併せて検討を加えた。雑種成犬を用い,左冠動脈の前下行枝及び対角枝を含むmultiple ligationにより急性心筋梗塞を作成し,その後ショックに陥った時点で遠心ポンプ(BioMedicus社製Bio-Pump) を用いる左心バイパスを実施した。実験動物をバイパス流量により以下の3群に分類した。すなわちI群:バイパス流量を心筋梗塞後ショックに陥った状態における心拍出量の50%にした群,II群:不全心作成後,各時点においてパイパス流量を最大とした群, III群:不全心作成後,LHBを実施しなかった対照群である。III群では心不全が進行し,全例が90分以内に死亡し,広範な心筋梗塞の予後は不良であった。左心拍出量にバイパス流量を加えたtotal flow (TF) はLHBの開始によりI群で18%,II群で49%の増加を認めた。平均バイパス率はI群で47%,II群で84%であった。また,LHBにより平均動脈圧はI群で14%,II群で26%の増加を認め, LVmax. dp/dtはI群で13%,II群で48%の低下がみられ,後者で著明な心補助効果が認められた。一方,右心系の血行動態(肺動圧PAP,右室圧RVP,中心静脈圧CVP) ではI,II群とも有意な変化はみられなかった。血小板数についてはLHB開始後も10x10^4以上のほぼ一定した値を維持し,分時溶血量については常時0.015mg/dl/min./kg以下の値が保持され,特問題はみられなかった。また,各種血清酵素活性(GOT, GPT, LDH, CPK)においてもLHBの実施による大きな影響は認められなかった。また,一方では,LHB終了後,心,肺,肝,腎の各臓器についても,病理学的検討を加えたが,梗塞や虚血による明らかな変化はみられなかった。臨床面においては,左房(左心耳)より脱血し,大腿動脈又は外腸骨動脈に送血する一時的左心バイパス法を用いて,胸部下行大動脈瘤及び胸腹部大動脈瘤の4例に対し,手術を施行し,良好な結果を得た。LHB実施中はbypass flow (BF) を0.8〜1.7L/min. にコントロールすることにより,至適な橈骨動脈圧及び足背動脈圧が得られ,さらに十分な尿量が確保できた。本法はバイパス流量をコントロールすることにより,至適な脳循環と腎血流を得ることができ,LHB実施中の血行動態,血液成分及び肝腎機能などに特に問題は認められず,術後経過も良好であった。以上の所見より,Bio-Pumpは補助人工心臓として臨床応用は十分可能であり,胸部下行大動脈瘤及び胸腹部大動脈瘤手術に際しでもすぐれた補助手段であると結論された。
- 神戸大学の論文
著者
-
岡田 昌義
神戸大学医学部第二外科学教室
-
久保田 真毅
甲南病院外科
-
岡田 昌義
神戸大学医学部
-
今井 雅尚
神戸大学第2外科
-
今井 雅尚
神戸大学医学部第二外科
-
久保田 真毅
神戸大学医学部第二外科
-
久保田 真毅
神戸大学医学部外科学第二講座
-
久保田 真毅
神戸大学医学部 第二外科
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