軽度発達障害児の親の語りと「親の会」の結束
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概要
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軽度発達障害についての研究は,1800年代中期の医学における脳研究が出発点であり,現在では医学・心理学・教育学分野を中心に,障害部位の特定や個人の能力向上を目的とした研究が行われている。軽度発達障害には原因が特定されていないものも含まれるが,国際的に用いられている診断基準も幅のある解釈が可能なものがあり,診断の重複がおきやすい。また,発達の障害が軽度であるために正常な発達との境界も不明瞭となっている。このように連続性のある障害であるが,その「親の会」は,教育的・行政的対応の変化に焦点を当てた活動をおこなっている。さまざまな特徴をもつ子どもの親であり,その経験のストーリーも異なっている「親の会」の会員が一つの集団として活動が出来るのは,「親の会」が独特の集団として形成されているからだと考えられる。親としての苦労の経験は,軽度発達障害児の親同士が語り合うことを通じて,その中で他の社会集団の状況との差異を明らかにすることで,共通のものとして認識されている。また,親の語りという相互作用を分析することで,通常の疾患をもつ子どもの親の語りとは異なった常識の上に立つ表現を使用し「親の会」に特有なストーリーを語り続けることによって,「親の会」が一定の機能をもち成り立っているということがわ反面,「親の会」が軽度発達障害児の社会への適応を目指して教育や行政機関に働きかけているにもかかわらず,その活動そのものが,結局は軽度発達障害というカテゴリーを親もまた一つのカテゴリーとして構築しているという側面をもつことも明らかになった。
- 熊本保健科学大学の論文
- 2005-03-15
著者
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