情報技術をイネーブラーとするビジネス・デコンストラクション
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概要
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バブル経済の崩壊後、各産業における経営環境は、例外なく急激に変化してきている。そこでは、相当多くの企業が、事業解体とそれに伴う事業再構築を一体的に行い、既存の事業構造そのものを根本的に変革させている。このように、近年の企業経営における事業構造の変革は、元来、哲学に由来し、思想家ジャック・デリダが操作概念として用いたデコンストラクションに比定できる。企業経営の場におけるビジネス・デコンストラクションの概念は、イネーブラーとしての情報技術によって、企業の経営基盤あるいは経営環境そのものが根幹から変革し、そのような企業変革なくしては存在すら不可能になっていることを意味する。そこで、本論では、まず、哲学・思想などにおけるデコンストラクションの概念について、その本源的な意味を吟味する。その結果、デコンストラクションとは、社会システムのパラダイム転換を背景に、従来とは異なる視点から構造そのものを再検討し、必要であれば、その構造を解体するとともに再構築することであると解釈した。ここでいう企業経営の場におけるビジネス・デコンストラクションとは、既成の事業に関する定義や競争ルールを、それまでとは異なる視点から自省して解体し、新しい事業の定義や競争ルールを再構築することにより、企業経営における事業構造を変革することとした。さらに、ビジネス・デコンストラクションの本質は、具体的には、それまでの事業構造におけるバリューチェーンの解体と再構築を伴うことに存在する。ここでいうバリューチェーンは、企業全体の各職能、各事業部門、さらに産業全体にまでおよぶバリューチェーンにおいて、自社の適合性を俯瞰するとともに、選択と集中の視点から分析する手法としても有効である。このように、ビジネス・デコンストラクションは、近年の企業経営における事業構造の変革を解明するうえで、きわめて新しい視点を提示するものである。本論は、上述したデコンストラクションに関する認識に基づき、とくに、情報技術の発展が経営イノベーションのイネーブラーとなり、既存の事業経営に関わるビジネスモデルを解体し、さらに再構築する過程について検討・考察している。とくに、ここでは、情報の経済性を基礎において理論的な検討をするとともに、経験的事実としてビジネス・デコンストラクションに関わる企業経営の事例を具体的に5件収り上げ、理論実証的な本研究における知見と含意について論究する。
- 2001-12-21
著者
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