二重否定表現「ぬことなし」をめぐって : 源氏物語を資料として(文学・文化編)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
源氏物語における二重否定表現「ぬことなし」は,使用範囲が限定されるものである。基本的には,否定の助動詞が接続して使用される動詞にかぎられている。そして,その意味も,「あく」のような満足の程度,「おぼしいたる」のような配慮のいきとどき,といった心的な意味のみである。それゆえ,源氏物語での「ぬことなし」は,二重否定をしめす表現形式として一般化していないとするのが妥当である。現代語の「ないことはない」が一連の「語句」として文型辞典などに掲載されるのと比較すると,まだその前段階にあるとかんがえられる。
- 甲南女子大学の論文
- 2005-03-18
著者
関連論文
- 塚原鉄雄, 『新修竹取物語別記補訂』, 新典社, 平成21年8月刊, \10,000(表現研究関係文献紹介)
- 竹取物語の会話文の「文末表現」--和文の会話文の文体的特徴をめぐって
- 源氏物語横笛の巻の段落構成:助動詞「けり」による段落構成の巻々
- 「属性表現」をめぐって--ツンデレ表現と役割語との相違点を中心に
- 源氏物語における助動詞キの会話文・心話文・消息文での文末用法(1) : 終止形キの用法を中心に
- 源氏物語における「たり」「り」の文末用法--係り結びの使用頻度と文体差との関連をめぐって
- 源氏物語における指示語「かくて」の一用法:少女の巻をめぐって
- 源氏物語でのザリキ形・ザリツ形・ザリケリ形 : 否定表現におけるテンス・アスペクト
- ツンデレ表現の待遇性--接続助詞カラによる「言いさし」の表現を中心に
- 源氏物語葵の巻の段落構成
- 源氏物語宿木の巻の構成方法
- 源氏物語における対偶構成の巻々(3) : 明石の巻を中心に
- 源氏物語における対偶構成の巻々(二) : 賢木の巻をめぐって
- 源氏物語若菜の巻の構成方法 : 上下巻構成と段落構成の関連をめぐって
- 源氏物語における対偶構成の巻々(1) : 紅葉賀の巻と花宴の巻を中心に
- 源氏物語薄雲の巻の段落構成 : 助動詞「けり」使用の一方法
- 源語初音の表現構成 : 終助詞「かし」による文末規定
- 二重否定表現「ぬことなし」をめぐって : 源氏物語を資料として(文学・文化編)
- 文章・文体(史的研究)(2002年・2003年における日本語学界の展望)
- 中古国語の訓読表現 : 「にちかし」の用法をめぐって
- 漢文訓読と中古国語 : 「かうぶる」と「かづく」をめぐって
- 助動詞キと「直接体験」--地の文での係り結びの使用傾向をめぐって (日本語文法史研究の現在)
- 助動詞「つ」「ぬ」と係り結び--源氏物語を中心に
- 加藤浩司著『キ・ケリの研究』
- 平安和文における文の終止 : 源氏物語を資料として
- 古代語(文法・語彙・表現) (特集 平成11年(自1月〜至12月)国語国文学界の動向) -- (国語学)
- 源氏物語藤裏葉の巻の段落構成--巻相互の連接性をめぐって
- 二重否定表現「ぬにしもあらず」と「ずしもあらじ」--源氏物語を資料として
- 平安和文における「段落」明示の形式--源氏物語を資料として
- 平安和文における「語りのハ」の可能性--源氏物語の例を中心に
- 源氏物詣でのタラズ形・ラズ形 : ザリキ形・ザリツ形・ザリケリ形との比較を中心に
- 平安和文における地の文の係り結び : 源氏物語若菜上巻を資料として((文学・文化編))
- 源語須磨の表現構成--助動詞「ぬ」による段落構成
- 「ボク少女」の言語表現 : 常用性のある「属性表現」と役割語との接点
- 岡崎友子著, 『日本語指示詞の歴史的研究』, 2010年2月15日発行, ひつじ書房刊, A5判, 332ページ, 6,600円+税
- 「玄奘三蔵絵」詞書における指示語「かくて」 : 和文系語彙と訓読系語彙の併用の観点から