源氏物語でのザリキ形・ザリツ形・ザリケリ形 : 否定表現におけるテンス・アスペクト
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概要
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古典語においては,現代語と比較すると,テンス・アスペクトをになうとされる語形が多様であることがしられている。しかし,それは,いわゆる肯定表現のばあいに限定されるもので,源氏物語での否定表現においては,ザリキ形・ザリツ形・ザリケリ形の3つの語形しか存在しない。本稿では,これらの語形が,どのようにつかいわけられているのかを検討した。その結果,ザリキ形が過去の時点における否定的事態を,ザリツ形が過去から継続していた否定的事態が終了したことを,ザリケリ形が話し手の過去の否定的事態に対して「感慨」をまじえて再確認することを,それぞれしめしていることがあきらかとなった。そして,ザリケリ形では,現時点まで否定的な事態の継続していたことや,現時点以降も否定的な事態の継続する可能性のあることをしめすこともありうる。ザリケリ形は,ムード的な意味を基本としながらも,ザリキ形やザリツ形ではしめしにくいアスペクト的な意味をしめす役割をになっているとみることもできるのである。
- 2007-03-20
著者
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