日本の女性障害者が経験する抑圧 : "Simultaneous Oppression"の視点から
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概要
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戦後、日本の障害者福祉政策は、いわゆる「医学モデル」の視点を基盤に発展した。換言すれば、障害を持つ者の障害部位に着目し、医学的視点からその重軽度を判定し、その判定に基づいて社会福祉サービスを提供してきた。しかし、1970年代以降、日本の障害者運動は、障害部位の治療・リハビリに重点を置く施策、ならびに障害者個人に原因を見る専門家や一般社会に疑問を持ち、声をあげ始めた。特に青い芝の会の活動は当時大きな影響を与えた。さらに、国際障害者年以降、欧米の障害者運動の影響を受けて、新たな自立理念とその理念に基づいた社会福祉サービスを提案するようになった。自立生活運動から生まれたこの自立理念は日本の社会福祉施策にも少なからず影響を与えているが、この自立理念を語る時にジェンダーの視点を取り入れることの重要性が理解されつつある。つまり、女性の障害を持つ者が抱えているニーズを分析する上でジェンダーの視点が求められている。女性障害者は、障害者運動の中でも女性運動の中でも周辺に追いやられていたため、女性であることと障害があることの同時的抑圧(simultaneous oppression。double handicapとは異なる)を受けている。本論では女性障害者が日常的に直面するこの同時的抑圧について分析をするとともに、simultaneous oppressionというコンセプトの有効性について分析する。結論として、上記のコンセプトの有効性を次の3点に集約し、確認した。(1)同時的抑圧(simultaneous oppression)のコンセプトは女性障害者の生活を明確にする上で有効である。特にアジア太平洋地域の女性障害者にとっては重要である。(2)女性障害者以外の他の同時的抑圧を知る上で重要である。例えば、男性障害者も障害であることと男らしさや能力(able-ism)を強要する社会からの抑圧に苦しんでいる。(3)同時的抑圧は、一方で社会の矛盾がよく見えるので、新たな価値を生み出す機会となる。
- 沖縄国際大学の論文
- 2005-03-31
著者
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