胃粘膜上皮細胞におけるtrefoil factor family 1 (TFF1)発現に影響を与える因子に関する検討

概要

論文の詳細を見る
乳癌由来細胞株MCF-7でエストロゲン誘導遺伝子として見出されたTFF1は,生理的には胃粘膜に発現し重要な粘膜防御因子として機能している.本研究では,胃癌由来細胞株MKN45を用い,胃におけるTFF1発現調節機構について検討した.MCF-7ではTFF1発現はエストロゲン依存的であったが,MKN45ではTFF1の発現はエストロゲン非感受性であり,TFF1遺伝子プロモーター上のエストロゲン応答配列よりもさらに近位側の配列が,MKN45におけるTFF1発現に大きな影響を与えていた.MKN45にもエストロゲン受容体(ERα,ERβ)の発現は認められたが,MCF-7と比べるとERαの発現レベルが低く,ERαを強制的に発現させるとMKN45でもTFF1発現がエストロゲン感受性となった.胃粘膜でのTFF1発現は粘膜損傷時に上昇することが知られているので,このような誘導性のTFF1発現機構を検討する目的でphorbol ester (TPA),TNF-αの影響をみたところ,TPAはAP-1を介して,TNF-αはNF-κBを介してTFF1の発現を上昇させることが示唆された.これらの結果より,胃粘膜上皮細胞ではTFF1発現はエストロゲン非依存性であり,また,AP-1やNF-κBが誘導性の発現調節に関与していると考えられた.
獨協医科大学の論文
2005-03-25