胎盤および子宮における一酸化窒素(NO)産生の意義とその調節機構(平成14年度麻布大学公的研究助成金事業研究成果報告)
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概要
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妊娠の維持とその調節機構にNOが重要な役割を有していることが示唆されているが,NOは不安定なフリーラジカルであるため,解析が困難であった。近年,ジチオカルバメート鉄錯体であるFe-DTCS(Fe-N-(dithiocarboxy) sarcosine)を用いて,不安定なNOを安定なNO-Fe-DTCS錯体にトラップした後,電子常磁性共鳴吸収(electron paramaenetic resonance:EPR)装置により解析することにより,NO産生を検出し,定量化できることが報告されている。本研究では,このスピントラップ-EPR法により胎盤と子宮におけるNO産生を解析し,定量的RT-PCR法によりNO産生に寄与するNOSアイソフォームを明らかにすることにより,妊娠後期の胎盤と子宮におけるNO産生の意義とその調節機構を検討した。妊娠19.5日から妊娠21.8日の胎盤と子宮におけるNO産生に変動は認められなかった。定置的RT-PCR法により,妊娠21.5日の胎盤においてはiNOSmRNAの発現が妊娠19.5日と比べて有意に増加していたが,eNOSmRNAの発現に妊娠時期による変動は認められなかったことから,妊娠後期の胎盤におけるNO産生には,eNOSも関与しているものの,iNOSの寄与が大きいものと考えられた。以上の結果から,妊娠末期の胎盤においては,血小板凝集抑制や血流量維持などに関与しているNO産生を分娩直前まで維持するために,iNOS遺伝子の発現が転写レベルで調節されているものと考えられた。
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