未破裂脳動脈瘤に対する最近の知見と治療方針
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概要
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脳動脈瘤の発生には血行力学的負荷の関与が考えられており,Willis動脈輪分岐部には大きなshear stressが血管壁にかかり,局所的なangiogenesisが生じ動脈瘤様のふくらみが発生する.未破裂脳動脈瘤(UIA)の保有率は成人の2〜3%と考えられている.破裂率についてISUIAの続報では7〜9mmのgroup1(SAHの既往なし)の年間破裂率は0.7%,10〜25mmの大型の瘤では初期1年の破裂率は7%,25mm以上では17%であった.UCAS Japanでは5mm以上1%/年,10mm以上2%/年,全体(3mm以上)では0.69%/年,との破裂率が中間報告された.一般的に,(1)破裂脳動脈瘤の70%は6mm以下である,(2)症候性の瘤・多発性の瘤・増大する瘤・不整形の瘤,(3)家族歴のある人・多発性のう胞腎の人,(4)喫煙者・高血圧症の人などは破裂しやすい.(5)日本は欧米に比し破裂する人は人口10万人当たり毎年15〜20人(欧米5〜10人)と多い.未破裂脳動脈瘤の治療成績はこれまでの報告では,手術死亡率は0〜1%,重大な合併症の発生率は4.0〜6.5%であり,破裂脳動脈瘤の手術成績に比し格段に良好な成績である.ちなみに私どもの施設では手術死亡率は0%,退院時に残存する合併症は3.7%である.治療法の選択,すなわち開頭クリッピング術か血管内コイリング術かについては,日本ではコイリング治療がいまだ全体の2割以下なので結論が出ていない.UIAに対する治療方針について著者は現時点では大きさが5mm以上である場合は,患者の希望・年齢・医学的リスクファクター等を鑑みて治療を検討している.現在平均寿命は男性78.32歳・女性85.23歳であるが,10年以上の余命がある場合は治療適応と考えている.5mm以下の瘤に対しても,家族性瘤や,多発性のう胞腎等の基礎疾患を有する場合や,治療リスクが極めて低い場合,患者の強い希望がある場合,などは治療を検討している.いずれにしてもUIAに対する治療指針の確立には,よりレベルの高いエビデンスの構築が必要である.さらに各施設,各人の手術成績を提示しながら個々の患者との十分なるインフォームドコンセントに努めるべきである.
- 順天堂大学の論文
- 2003-09-30
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