琉球産スイカズラ科植物
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概要
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最近出版された琉球植物誌(初島, 1971)の中で, スイカズラ科植物は10種, 1変種にまとめられているが, これらの中にはその存在に疑問のあるものも含まれている。私は東南アジア産のこの植物群を研究しているが, 今回の調査で新しく得られた資料を加えて各種を再検討したところいくつかの異論が得られた。琉球から台湾にかけて分布するとされていたゴモジュViburnum suspensumは分類形質の比較検討の結果, 台湾産のものとは異なることが判明した。そこで, 琉球列島にはヒメスイカズラLonicera miyaguskianaやオオシマガアズミViburnum tashiroiと共に3種の特産種があることになる。ゴモジュは喜界・奄美・徳之島・沖繩・久米の各島に見られ, オオシマガマズミは奄美大島と徳之島とに見られる。これらの近縁種は共に台湾にあるが, 先島諸島には生育していない。いずれの場合も地理的に近いはずの先島に生育していない点で共通しており, 植物地理を考える上で興味深い分布型を示すものである。タイワンツクバネウツギAbelia chinensisの石垣島に産することが, このほど古瀬義氏によって明らかにされた。なお, 1924年以来琉球にも生育するとされてきたキダチニンドウLonicera hypoglaucaはハマニンドウL.affinisの葉裏に毛の多い型のものである可能性が強く, 初島と同様に私もキダチニンドウは琉球列島にはないと考える。
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