プラトン『国家』における魂の本性 : ハルモニアとプロネーシス
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概要
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プラトン哲学において魂の問題は、イデアと現象界を媒介するもの(ツェラー)として、中心的な役割をになう問題のひとつと考えられる。ところが、全体系を通じて、魂はいったい単形相的なものと考えられているのか、あるいは多形相的なものと考えられているのか。そしてもし多形相的なものとすれば、魂の不死というとき、全体として不死なのか、理性のみ不死なのか。あるいは全体系にわたって発展的に変化していったとみるべきか。これらの問題について、いまだに定説というものはないようである。そして全体として三形相であるが不死なものは理性だけである,とする体系的な考え方と、魂を単形相的なものとする考えから合成されたものとする考えに変化したが、そのさい真の魂はやはり不死的な理性である、とみる発展的な考え方とが対立しているようである。ところがたとえば、『国家』第十巻(611a以下)における魂の不死について、理性のみ不死ととる定説があって、この箇所と『パイドロス』(24a以下)の神話における三形相とも不死という箇所とのあいだの矛盾については、上のいずれの考え方をとっても解決することはできない。『国家』第十巻については、ツェラー、ネットルシップ、アダム、グリューブ、ガスリィ、クロス・ウーズリィ等々(書名略)によって、一般に理性のみ不死と解釈されている。そして、魂に三部分がそなわるのは、魂が身体と結びついたところに由来する、とされる。ところが、フルティジェ、ロビンソン、グレーゼルは、この定説に反対して、三形相とも不死と読んでいる。プラトン全体について三形相説が妥当するかどうかを吟味する余裕はないが、『国家』第十巻については、この解釈が正しいように思われる。以下の小論は『国家』を主尾一貫したものとして読みながら、『国家』のテーマと関連しつつ、魂の本性に光を当ててみようとしたものである。まずIにおいて、第四巻にもとづいて魂の三形相について述べ、IIにおいて、三形相の調和のあり方を考え、IIIにおいて、全篇に脈うつ音楽の精神から調和の意味を考え、IVにおいて、第八、九巻および第十巻の模倣芸術批判においても三形相が根底にあることを吟味し、Vにおいて、以上の論述をもとにして、魂は全体として不死とみられるべきではないか、ということを証明しようと試みた。このことによって『国家』だけではなく、プラトン全体系における魂の問題に対しても、いっそう主尾一貫した解釈の可能性が開かれるのではないか、と考えることもできるように思われる。In dem vierten Buch der Politeia teilt Platon die Seele in drei eide: logistikon, thymos und epithymetikon. Es ist die sogenannte platonische Seelenteilungslehre, aber der "Teil" ist nicht der schickliche Ausdruck für die Seele. Wenn man genauer untersucht, könnte man einen noch passenderen Ausdruck finden: trieide der Seele. Und in dem Grunde der Seele in wahrer Natur wird harmonia bemerkt. Die Kardinaltugenden sind erklärt auf Grund der trieide der Seele, aber das ist nicht genug. Durch periagoge der ganzen Seele aus der Höhle wird phronesis erlangt. Es ist phronesis, die die auf der Gewohnheit beruhte Tugenden erhöht. Nach opinio communis bei der Interpretation des Passus 611A ff〓 ist nur logistikon der Seele unsterblich. Aber nach Frutiger und Graeser interpretieren wir den Passus daβ die ganze Seele unsterblich sei. Jedoch müssen wir unterscheiden zwei Weisen der Unsterblichkeit der Seele bei Platon: einerseits wandert die Seele in endloser Zeit, andererseits erlangt die Seele Unsterblichkeit schon in dieser Welt.
- 大阪教育大学の論文
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