明治・大正期高利貸付資本の一考察
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概要
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前期的商業資本とともに「資本の洪水前的形態」(antediluvianische Formen des Kapitals)に属する高利貸付資本は,商品取引と貨幣の一定の発展以外に,自己の実存に必要な条件を有さない。わが国江戸期においては,それが封建領主および小農民に吸着して,自己増殖運動の広範な展開がみられたが,明治期以後も,一般的には近代的信用制度に包含されえない金融領域をカバーするものとして,高利貸付資本は根強く残存した。本稿の目的は,大阪周辺地域におけるその残存状況を明治・大正期にわたって追究することにある。いうまでもなく,高利貸付資本の存在形態は,日本資本主義の諸段階により,かつまた地域差により具体的様相を異にした。大阪周辺の先進農村における高利貸付資本は,早くから土地集積と分化して純化された姿態をあらわし,商工業金融の領域においても無視できない比重を占めたが,独占資本の形成・確立がみられ,近代的金融機構の整備が進展した大正期には,存立条件の縮小により,停滞ないしは衰退の傾向が決定的であり,新たな貨幣蓄積手段への転化を余儀なくされていった。The purpose of this paper is to describe 'Metamorphose des Wucherkapital'. In the Kawachi district, it can be traced back into the Edo period that lots of rich farmers had driven financial business on a large scale. But in the Meiji and Taisho period, step by step coming into existence of banking system and credit associations made their business at a low ebb.
著者
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