顎関節症を伴った成人開咬患者の一治験例 : スプリント療法と咬合再構築のための歯科矯正治療について
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概要
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顎関節症患者に対するスプリントによる保存療法は, 顎関節症状を改善する上で有効な手法である.しかし, スプリントを除去すると顎関節症状の再発が多く認められることより, スプリントによって誘導された下顎位における咬合の再構築が必要である.そこで, 顎関節症状を伴う成人開咬患者に対してスプリント療法と咬合再構築を目的とした矯正治療を行った結果, 良好な咬合と顎関節症状の改善がなされたので報告する.患者は初診時年齢の女性で, 右側顎関節の疼痛と雑音, および全身症状として目まいや立ち眩みが認められた.咬合所見として, 軽度の叢生と前歯部の開咬が認められた.顎関節同時多層断層X線写真より, 右側下顎頭は下顎窩に対して後方位を呈していた.そこで, スプリントを併用しながら咬合再構築を目的とした矯正治療を行った.2年10カ月の動的治療の結果, 前歯部の開咬は改善し, さらに顎関節症状ならびに全身症状についてもほぼ消失した.顎関節同時多層断層X線写真より, 右側下顎頭は下顎窩に対してほぼ中央に位置していた.MRI所見では左側顎関節円板は下顎頭と下顎窩の間の正常な位置を呈したものの, 右側顎関節円板は前方へ転位しており, 開口時においても復位は認められなかった.以上より, 顎関節症患者の咬合再構築を目的とした矯正治療により, スプリントによって誘導された下顎位での安定した咬合の獲得と, 顎関節症状の改善は可能であることが示された.しかし, 顎関節病態の程度によって顎関節円板の整位は必ずしも達成できないことが示唆された.
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
-
丹根 一夫
広島大学歯学部附属病院医療情報室
-
丹根 一夫
ゆとり歯科医院
-
田中 栄二
広大
-
田中 栄二
東京都
-
田中 栄二
大阪大学歯学部歯科矯正学教室
-
丹根 一夫
広島大学歯学部
-
尾関 哲
大阪府開業
-
Tanne K
Department Of Orthodontics And Craniofacial Developmental Biology Hiroshima University Graduate Scho
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