水田モデル系におけるベンスルフロンメチルの挙動
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概要
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わが国の水田において初期〜中期の雑草防除に用いられる除草剤のほとんどは粒剤として水面施用されるため、その効果ならびに選択性は土壌の吸着度合や処理前後の水管理などの影響を受けやすい。本報では水田モデル系を用いた実験により、ベンスルフロンメチル(以下BSMと略す)の田面水中たらびに土壌中での消長と効果・薬害との関連について得られた知見を報告する。実験1.米国の畑土壌4種(Table 1)をワグネルポットにつめ、3cm湛水状態にした後にBSMの原体および2種類の混合製剤(粒剤)をBSMの有効成分で100 g/ha相当水面施用し田面水中濃度を経時的に測定した。BSM濃度は処理後24時間以内にほぼ理論値に近いレベルでピークになり、2〜4日目で急激な低下を示したが、その後7〜15日目までは漸減するという傾向がみとめられた。土壌の種類による差は主に粘土および有機質含量(OM)の違いに帰因するものと考えられ、両方ともに少い土壌では4日目以降のBSM濃度が最も高いレベルにあった(Figure 1〜3)。実験2. 1と同様の実験の日本の水田土壌7種(Table 2)を用いて行なったところ、実験1とはピーク時の濃度レベルに違いがみとめられたものの経時変化の全体的た傾向は同様であった。特に比較的粘土含量および陽イオン交換容量(CEC)の低い土壌ではBSM濃度が比較的高いレベルにある傾向が見られた(Figure 4)。実験3. 実験2で用いた7種の土壌についてBSMの吸着を知るため、次のような実験を行なった。まず各土壌の試料5gを遠江管にとり、異なる濃度のBSM水溶液100mlを加え25℃で土壌と水中の濃度勾配が一定になるまで(通常24時間)振どうした。これを遠心分離して上澄液中のBSM濃度を測定し、その値からBSMの水中濃度1ppmにおけるFreundlichの吸着係数(K)を求めた(Table 3)。また各土壌のpH・CEC・0M・粘土含量とK値との相関を調べたところ、特にCECとの間に高い相関がみとめられた(Table 4)。実験4.上記の実験とは別に処理後の水管理によってBSMの除草効果にどのようた影響が生ずるかを知るために次のような実験を行なった。まず、7種の水田雑草をワグネルポットで生育させ、生育始期こ湛水3cmでBSMを処理し、処理当目から7日目までの所定目数後に田面水の一部又は全部を除去し5日間置いた後に水深を元に戻し、処理後21日目に除草効果を比較した。その結果、田面水全部を処理当目から3日目までに除去した場合には、3cm湛水を保った対照区に比べて除草効果が約60%から20%程度減少したのに対し、田面水を1cm残した場合には処理当月に除去しても15%程度の減少にとどまった。また、処理後4日および7日目に除去した場合には、どちらもほとんど除草効果に影響がみられていたい(Figure 5)。この結果はBSMの除草効果が処理後数日のうちに完成することを示唆しており、実験1および2で明らかになった処理後の田面水中濃度の経時変化(Figure 1-3)とよく符合している。前報のイネにおけるBSMの吸収および蓄積のパターンがこれらの雑草にもあてはまるとすれぼ、処理後の田面水中濃度の経時変化の傾向がBSMの除草効果の安定性に強い影響を持たらすことが推察され得る。また水中土壌の特性、特にCEC・粘土含量およびOMなどによって田面水中濃度が変わることも考えられる(Figure 1〜4)が、処理後の水管理を適切に行たうことによって実際上の除草効果の変動を最小限のものにすることができるといえよう。
- 日本雑草学会の論文
- 1987-12-18
著者
-
湯山 猛
デュポンジャパン
-
湯山 猛
デュポンジャパン農業事業部
-
湯山 猛
デュポン・ファーイースト
-
渡辺 嘉久
北興科学
-
ACKERSON Robert
デュポン・ジャパン
-
武田 俊司
デュポン・ジャパン
-
Ackerson R
E.i. Du Pont De Nemours & Co. Inc.
-
武田 俊司
デュポンジャパン農業事業部
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