DPX-F5384の除草作用と選択作用機構
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概要
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DPX-F5384の除草作用と選択作用機構を明らかにするために、本化合物の生育阻害作用に対するバリンとイソロイシンの影響、植物におけるバリンとイソロイシンの生合成経路の初期段階を触媒するアセトラクテート合成酵素(ALS)に対する阻害、および本化合物に耐性のイネと感受性雑草における代謝について比較検討した。 1) 5ppbの濃度のDPX-F5384を含む培地に、バリンとイソロイシンの各100μMを加え、切除したエンドウの根を生育させた。DPX-F5384のみの培地では、エンドウの根の生育は強く抑制されたが、パリソとイソロイシンを加えた培地では、DPX-F5384による生育抑制はほぼ完全に解除された(Table 1)。 2) ^14C-phenylと^14C-pyrimidine標識DPX-F5384を用いて、イネと雑草の葉による代謝を検討した。イネ葉による本化合物の代謝は急激であり、代謝半減期はイネで2.6〜9時間、雑草では50時間以上を示しその差は極めて顕著であった。さらに、イネ葉による主要な代謝物は、ピリミジン部分の4-位のメトキシ基の水酸化によって生ずる4-hydroxy類縁化合物で、この代謝物のALSに対する活性は、親化合物の約1/3000程度であり、除草活性も4000 gai/haの施用量で全く認められたかった。 3) DPX-F5384はイネ、タイヌビエ、カヤツリグサおよびエンドウのALSの働きを強く阻害した。ALSの活性を50%阻害する濃度は7〜25 ppbの範囲にあり、生育抑制を示す濃度とほぼ同水準で作用した。また、本化合物とその関連化合物のイネのALSに対する影響を調べた。その結果、DPX-5390以外のスルホニルウレア化合物は低濃度でALSの活性を阻害Lた。 4) 以上の結果から、DPX-F5384の除草作用機構は、植物の分岐鎖アミノ酸の生合成経路の初期段階における酵素、アセトラクテート合成酵素を阻害することによって、バリンとイソロイシンの生合成を妨げることを明らかにした。さらにまた、本化合物のイネと雑草間の高い選択性は、両者の代謝速度の著しい差異が重要な役割を果していることを示唆した。
- 日本雑草学会の論文
- 1986-08-26
著者
-
Hay James
デュポン農薬事業部
-
湯山 猛
デュポンジャパン
-
武田 俊司
デュポンジャパン
-
ERBES David
デュポン農薬事業部
-
SWEETSER Philip
デュポン農薬事業部
-
湯山 猛
デュポンジャパン農業事業部
-
Sweetser P
デュポン農薬事業部
-
武田 俊司
デュポンジャパン農業事業部
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