犬の永久歯におけるapical deltaの形成 (外科学)

概要

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apical deltaとは, 犬の歯根尖部で根尖分岐が放射状に広がり歯髄からの血管や神経が複雑に走行した管腔である. 本研究は, 犬の永久歯における根尖の構造とapical deltaの形成について検討した. 同腹のビーグル犬7頭を6か月齢〜9か月齢まで1か月毎に全歯根が揃うように抜歯し, HE染色標本により, 根尖を1型(no apical delta), II型(few apical delta), IIIA型(low apical delta), IIIB型(high apical delta)に分類した. さらに附属動物病院で歯周疾患により抜歯した33症例(12犬種, 年齢:4〜15歳)の314歯根を研磨標本によって同様に調査した. その結果, ビーグル犬の6か月齢では, 1型が半数以上(53%)を占め, 7か月齢では, ほとんどがIIIB型(76%)であり, I〜IIIA型は僅かであった. 8および9か月齢では, 全てがIIIB型であった. 歯周疾患で抜歯した歯根については, I型およびII型は全く観察されず, ほとんどがIIIB型(95%)であった. 以上の結果から, 根尖は閉鎖後, 急速にapical deltaを形成し, 少なくとも8か月齢のビーグル犬は組織学的には根尖が全て閉鎖し, apical deltaが存在する. また, 4歳以上の多くの犬種においても成熟タイプのapical deltaが存在する. ヒトにおいては, 根管経由の治療が施せない理由として根尖分岐の存在があげられているが, apical deltaはさらに複雑な構造であり, 犬の根管治療においては, この構造を十分に考慮した治療が必要である.
社団法人日本獣医学会の論文

犬の永久歯におけるapical deltaの形成 (外科学)

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