神経切断後の鋤鼻器感覚上皮の形態学的, 組織化学的検討
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概要
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鋤鼻受容細胞は他のニューロンと異なり, 成熟動物においても再生能力を有している.本研究では鋤鼻神経切断の技法を用いて, ラット鋤鼻器感覚上皮の変性および再生について形態学的, 組織化学的に詳細な検討を行った.電子顕微鏡による観察では鋤鼻神経切断後鋤鼻受容細胞は急速に変性し, 切断後6日間でその数は最少となりほとんど観察することができなくなった.その再生中は, 個体発生時と同様に線毛や鋤鼻腔に突出する突起物が観察され, 切断後15日目までに鋤鼻受容細胞の特徴の一つである細い微絨毛が再び観察されるようになった.また, NCAMの鋤鼻腔表面における免疫陽性反応は神経切断後6日目では認められないが, 切断15日目には免疫陽性反応が再び認められた.また, 鋤鼻系に特異的な反応を示すレクチンであるBSL-IとVVAは変性中に免疫陽性反応の減少が見られたが, 受容細胞の数が最少となる切断後6日目の時点でも陽性反応が確認された.その後15日目までに鋤鼻器でのレクチンの陽性反応はコントロールレベルまで回復した.以上の結果から(1)鋤鼻受容細胞の変性は神経切断後の最初の週に起こること(2)NCAMは受容細胞に対する有効なマーカーであることが確認され, (3)鋤鼻系特異的なレクチンは受容細胞と支持細胞の双方に反応すること(4)受容細胞再生中の形態学的な変化は発生中の形態学的変化と同様の過程を経ることが示唆された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2000-12-25
著者
-
Costanzo Richard
バージニア州立大学医学部生理学講座
-
市川 眞澄
東京都神経科学総合研究所
-
市川 眞澄
東京都神経研・基盤技術
-
松岡 淳子
都神経研・発生形態
-
Yoshida-matsuoka Junko
Department Of Developmental Morphology Tokyo Metropolitan Institute For Neuroscience Crest Of The Ja
-
松岡 淳子
東京都神経科学総合研究所発生形態研究部門
-
松岡 勝人
新潟大学医学部第二解剖学講座
-
松岡 勝人
新潟大・医・第二解剖
-
松岡 勝人
新潟大学大学院医歯学総合研究科
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