犬糸状虫症の感染初期における臨床病理学的所見について

概要

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犬糸状虫症の感染初期の変化を観察するために, Dirofilaria immitis未感染犬に成熟子虫を接種し, その後7力月にわたって経時的に臨床検査および病理学的検査を行なった. 犬糸状虫症の病態の中心をなす肺動脈病変は, 未成熟虫の寄生によりすでに起っていることがわかった. すなわち, その肺動脈病変は接種後5力月から動脈内膜炎として病埋組織学的に明らかになり, 6力月後には病理解剖学的にも内膜の粗造化および肥厚が明確に示された. また, この肺動脈病変が, 将来うつ血性心不全を招来する肺高血圧症をひきおこす大きな要因になると考える. また, 心臓大血管造影(ACG)により, 接撞後5力月に虫体の像が把握され, 6力月以降において, 肺動脈内膜の病変が末梢肺動脈領域の樹枝状構造の乱れ, 血流の停止, 屈曲など異常所見として確認された. このことは, 犬糸状虫症の感染初期における病的変化を早期に, 正確に把握するためにはACGが最も診断的意義の高いことを示唆している. 稿を終わるに臨み, 人工接種犬の病理組織学的検索に当って, 御指導頂いた本学の磯田政恵教授に謝意を表する. また, 本論文の大要は, 第83回日本獣医学会(1977年)において報告した.
社団法人日本獣医学会の論文
1978-10-25