Psittacosis-lymphogranuloma-trachoma group (Chlamydia) の自然感染例と思われる猿(カニクイザル)の疾病
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概要
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昭和45年1月, フィリッピンより千葉県血清研究所に10頭のカニクイザル (Macaca irus) が搬入された. そのうち2頭に舌, 口唇の潰瘍形成を主徴とする Chlamydia による疾病が認められた. この2頭について, おもに病理組織学的の検索を行なった. 臨床的に削痩, 衰弱, 鼻漏, 食欲廃絶がみられた. 剖検すると, 舌, 口唇の粟粒大ないし大豆大の潰瘍形成が主病変で, 多発性嚢胞形成を伴う肋膜肺炎, 腎の腫脹, 口腔粘膜における〓爛形成および急性カタール性腸炎が認められた. 組織学的には, 潰瘍形成は口蓋扁桃にも認められた. 多形核白血球, 組織球, 線維芽球を含む多くの細胞集簇から成る潰瘍もあったが, 細胞浸潤は乏しく結合組織の増性をみるだけの病変もあった. 肺病変は線維素性肋膜炎を伴い, 繁殖性変化の強い小葉の混在するカタール性, クループ性肺炎の像を呈していた. さらにネフローゼ, 酸好性物質の沈着する脂肪織炎がみられた. しかし中枢神経系には, 著変が認められなかった. 舌, 口蓋扁桃および口腔粘膜病変部の重層扁平上皮, および繁殖性変化が強い肺炎部の肺胞および気管支上皮には酸好性細胞質封入体が認められ,各々の細胞は, 水腫性に腫大していた. 封入体は PAS 反応に陽性, Giemsa 染色に紫青色, Azan 染色に赤桃色, Macchiavello 染色に淡桃色に着染された. 電顕的には, 舌潰瘍部に明瞭な膜におおわれ均質な構造を持つ Particle (Reticulate body), および内部に電子密度が高い Nudeoid 構造を持つ Particle (Elementary body) の球形ないし楕円形の Chlamydia-agent が, 多くは Vesicle によって囲まれて, 多数認められた. これらの Agent のホルマリン固定材料での大きさは, 前者では160〜420mμ, 後者では160〜350mμであった, 肺にも Chlamydia 様の Agent が認められた. これらの Agent は, 組織学的に認められた封入体に一致するものと思われる. 搬入時に採取された血清で, Chlamydia 抗原による血球凝集阻止(HI)反応が行なわれ, 第1例で1:80, 第2例で1:160の成績が得られた. また検査された他の5例でも, 1:20から1:320までの値が示された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1971-10-25
著者
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