東京都の荒川河川敷で採集したクロベンケイガニからの大平肺吸虫メタセルカリアの検出(寄生虫病学)
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概要
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関東地方における大平肺吸虫陽性カニの検出は,千葉県内を流れて太平洋に注ぐ河川に限られていた.そこで埼玉県・東京都を流れて東京湾に注ぐ荒川を選び,下流にある東京都の7つの区に12の調査地区を定めて,カニの採集と肺吸虫の検出を試みた.その結果,検査したクロベンケイガニ922匹のうち177匹(19%)から肺吸虫メタセルカリアが検出された.寄生率は葛飾区四ツ木地区が最多(89%)で,陽性カニ1匹当たりのメタセルカリアの平均寄生数(32.9個),および最大寄生数(190個)も最多を示した.メタセルカリアは楕円形を呈するものが大部分で,大きさ(内嚢の外径)は302μm×232μm(50個の平均値),口吸盤背縁に穿棘を,体肉内に赤色顆粒を認めた.試験感染ラットから得た成虫は,卵巣が複雑に分岐し,皮棘は群生していた.このようなメタセルカリアと成虫の形態学的特徴から,虫体を大平肺吸虫と同定した.メタセルカリアを検索材材料として得たリボソームDNA・ITS2領域の塩基配列からも,この結論が支持された.カニからの大平肺吸虫メタセルカリアの検出は,東京都ではこれが初めての報告となる.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2004-08-25
著者
-
森嶋 康之
国立感染症研究所
-
川中 正憲
国立感染症研究所寄生動物部
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川中 正憲
国立感染症研究所
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杉山 広
国立感染症研究所寄生動物部
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亀岡 洋祐
国立感染症研究所遺伝子資源室
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荒川 京子
国立感染症研究所・寄生動物部
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荒川 京子
国立感染症研究所 寄生動物部
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森嶋 康之
国立感染症研究所寄生動物部
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杉山 広
国立感染症研究所
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