歴史的既成市街地内居住地における住宅間口と住宅平面型の関係 : 金沢市におけるケース・スタディ No.2
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概要
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以上, 2間間口から4間間口までのプランについて, その平面構成, 室構成および奥行分布について検討した。その結果, 間口と平面構成には密接な法則性の存在することが明らかとなった。それは居住室空間確保という住宅空間における絶対的要求に併行して通路空間確保の要求もきわめて大きいところに由来している。その結果を整理するとまず歴史的既成市街地において現在存在する住宅は大きくは四つの型に類型化することができる。1.「通り抜け」型は完全に通路を確保しているために, いずれの間口においても相当の割合を占めている。このタイプの有利さは専用通路の充足と, それに伴う奥行の深い住宅への対応である。ただし居住室の規模を圧迫することなく通り抜け通路が確保されるのは3間間口以上であり, 3間間口でその割合は過半を占めている。3.5間間口以上では次第にその割合は低下する。すなわち, 居住室確保が相対的に奥行の浅い(棟高を高くする必要のない, 構造上有利な)住宅で可能であり, また間口のゆとりによってほかのタイプにおいても通路が基本的に確保できることによる。2.「玄関後退」型は住宅最前部より玄関(入口)が後退することにより住宅内部の動線は後退分だけ短縮されることになるが, 同時に後退分の内部面積も減少することになる。したがって面積的ゆとりの少ない2間間口ではほとんど現われず, 面積的損失による影響が相対的に少なくなる2.5間間口以上で取入れられている。ちなみに相対的に面積的ゆとりの大きい4間間口では主流となる。これは動線が短縮されることに加え, 次稿で分析する設備空間の前部への集中が可能となる利点や, 既に述べた外部空間の格式性, あるいは現代生活における駐車スペース需要への対応を可能とすることによる。3.「玄関」型は独立した通路を持たないために奥行の深い構成を取ることが困難なタイプである。したがって通路を取る余裕のない2間間口では必然的にこのタイプの割合は高い。2.5間間口まではこのタイプが相当比率見られるものの, 通路を設けることに支障の少ない3間間口以上での出現率は低くなる。4.「玄関+通路」型は独立した通路を備えたタイプであるが, 通路が住宅前後部にわたって貫き通っていないため深い構成にはなお不向きである。2間間口では通路を設けるゆとりがないため, このタイプは全く現われず, 2.5間間口から初めて登場する。本格的に取入れられるのは間口のゆとりによって相対的に奥行を深くしなくとも居住室数が確保でき, かつ通路確保が柔軟となる3.5間間口以上の場合である。5.歴史的既成市街地内住宅における室数要求は5室ないし6室であり, いずれの住宅型においても3.5間間口では5室ないし6室構成は充たされる(なおこの場合の「室」とは4.5帖以上の部屋を指している)。とくに「通り抜け」型では3間間口でも5室ないし6室構成が可能となり, このことが歴史的既成市街地の住宅型において「通り抜け」型が普遍的な型となってきた理由であるとともに, 住宅間口が3間間口ついで3.5間に収束してきた理由でもある。6.住宅型の選択においては室数とともに大規模室(8帖室)の充足できる「型」が選択される。3間間口になると, いずれの型においても8帖室の確保が可能となり, 住宅における3間間口収束への他の一つの理由ともなっている。次稿では紙幅の都合上論及できなかった各住宅類型と台所, 浴室, 便所等の設備空間の位置との関係について分析する。なお, 本論中にも記したごとく, 分析の中心となっている住宅平面プランは, 金沢工業大学島村昇研究室において収集されたものである。同教授からは, 資料利用の承諾を得たほか, 本論分析の段階においても折に触れ, 貴重な助言, 指導を頂いた。末筆ながら深甚なる謝意を表したい。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1982-07-30
著者
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