代理表面を用いた乾性沈着機構の研究 : II.酸性およびアルカリ性水面,水面,乾き面によるガス状および粒子状物質の沈着過程の分画
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
酸性水,アルカリ性水,水を張った各シャーレおよび乾いたシャーレを代理表面として用い,それらを1日間,降雨を避ける条件下で環境中に曝露する調査を40日間実施した。同時に,フィルター捕集およびローボリウムアンダーセンサンプラーにより大気中のガス状物質および粒子状物質中のイオン成分濃度および粒径分布を測定した。大気中の酸性ガスはアルカリ性水面に沈着しやすく,アルカリ性のガスは酸性水面に沈着しやすい。すなわち、これらガス状物質の沈着時の溶液面での残差抵抗をゼロに近づけることで,浮遊粒子状物質およびガス状物質の沈着を分別,測定する方法を検討した。これらの測定により,各代理表面に捕集された沈着フラックスの差分と大気中のガス状物質と粒子状物質の濃度との関係から,ガス状物質および粒子状物質の沈着機構,沈着速度を分別して評価した。S0_2,NH_3,NO_Xの1日平均の沈着速度は各々,0.76,0.70,0.04 cm/secであった。NO_Xの沈着速度が,SO_2,NH_3のそれらより低いのは,NO_Xが水に対する溶解度が低いため,他のガス状物質よりも水面での残差抵抗が大きいためと考えられた。微小粒子であるnss-SO_4^<2->,NH_4^+は各々,0.24,0.33cm/secであり,微小,粗大の両方に存在するN0_3^-は0.28cm/secであった。また,粗大粒子Na^+,K^+,Mg^<2+>は1.39,1.18,1.32,粗大粒子の中でもサイズの大きいCa^<2+>は2.01cm/secであった。Ca^<2+>粒子は重力沈降の影響が強いことが理解できた。粒子状物質が乾き面上に沈着後,風により乾き面から再飛散することは非常に少なかった。N0_3^-,NH_4^+およびCI^-は乾き面に沈着後,各々,その50%,40%,20%以上が揮散したことが推測された。一方,水面に沈着したNH_4^+量の約70%はNH_3の沈着による影響であること,水面に沈着したS0_4^<2->量の約80%はS0_2の沈着による影響であることが推測された。また,乾き面へのS0_2の沈着は殆どなかった。
- 2004-07-10
著者
-
下原 孝章
福岡県保健環境研究所
-
神田 学
東工大
-
植田 洋匡
京都大学防災研究所
-
植田 洋匡
東京工業大学
-
神田 学
東京工業大学大学院理工学研究科 国際開発工学専攻
-
神田 学
東京工業大学・国際開発工学専攻
関連論文
- P366 RAMSによる紅海沿岸を対象とした砂漠緑化シミュレーション
- 2C1130 九州北部地域における春季の大気汚染物質観測 : 黄砂現象に伴う砂じんと大気汚染物質の移流挙動について
- 2C0930 九州北部地域における春季の大気汚染物質観測 : 標高20m及び920mの2地点における汚染物質の性状
- 1G1445 エアロゾル中の硫酸イオン濃度と気圧配置 : 季節変動及び高濃度時の解析
- 1F1415 捕集時に生ずるアーティファクトの研究 : 捕集時間の差によるガス状及び粒子状物質の化学的変質
- 3H01 IGAC調査(7)九州北部2地点におけるガス、エアロゾルの性状 : 夏季及び冬季における酸性物質の起源
- 2H01 IGAC調査(1) : 1998年度調査の概要
- 3C1145 冬季に間欠的に観測された長距離越境汚染の数値解析
- 2F1052 高活性炭素繊維を装着した通風式フェンスの沿道大気浄化性能に関する実験的研究(2) : スリット型フェンスのNO_x除去性能(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- P256 リモートセンサによる顕熱フラックス測定の試み
- P141 夏季東京都心周辺における積乱雲の発生時の下層風系 : 2004年8月10日の事例
- P252 夏季東京都心周辺における積乱雲の発生過程 : 2004年8月10日の事例
- 2006年度春季大会専門分科会報告
- 日本における大気汚染物質排出グリッドデータベースの開発
- A210 夏季東京都心周辺におけるドップラーソーダ観測 : 対流雲発生時の下層大気構造を捉える試み(降水システムII)
- B113 サウジアラビア西海岸における乾燥地の緑地化に関する比較実験(気候システムI)
- 視点--潤う 地球に潤いを!--「持続可能な砂漠緑化」への挑戦
- P220 北米西南部チワワ砂漠における飛砂発生メカニズムのモデリング
- マイクロシミュレーションを活用した交通と大気環境の広域評価システム
- P106 都市ビル群の風下領域における境界層の2層構造
- P389 局在するビル群直上での乱流の応答特性
- P432 局在する都市の大気境界層に関する風洞実験とLESモデルの比較実験
- 2F0942 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究(19) : 高活性炭素繊維と光触媒の併用によるNO浄化能力の改善(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- WRFの都市気象研究への応用(次世代気象モデルの開発事例と気象シミュレーションの最先端)
- 屋外都市スケールモデル実験COSMOのねらいと成果
- 都市境界層における乱流相似則と組織構造
- P374 屋外模型都市による建物配列の違いが大気に及ぼす影響の比較検討
- 下水処理場での水温観測に基づく都市下水道の水・熱輸送に関する研究
- 2F0954 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究(20) : 半閉鎖系の道路空間における高濃度NO2の生成(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1D0930 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究(18) : 使用後ACFの再生技術の検討(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- 黄砂粒子の粒径分布・形状について
- 黄砂粒子の粒径分布について
- D311 屋外模型都市におけるPIVを用いた乱流計測(大気境界層I)
- 2F0930 九州北部地域における春季の大気汚染物質の観測 : 九州北部地域における煙霧の発生について
- 大気の物理相似則と都市での適用性・留意点
- P120 接地境界層における組織乱流の平均構造
- P111 屋外模型都市における内部・外部スケールの乱流構造特性
- D310 接地境界層スケールと混合層スケール乱流変動の分離(大気境界層I)
- P118 都市接地境界層内部スケールによる乱流統計量の相似性
- P247 屋外都市・準実スケールモデルCOSMOにおける乱流組織構造
- P132 屋外都市スケールモデルにおける乱流統計量の鉛直分布
- D205 LESによるエネルギーとCO_2に関する点計測インバランスの評価(相互作用)
- E213 LES を用いたインバランス問題に対する検討
- LESを用いたインバランス問題に対する検討
- P323 台風9918号の温帯低気圧化時における上層・下層の渦位偏差間の相互作用に関する研究
- 2F1018 ACFフェンスを用いたNO_2除去風洞実験の数値シミュレーション(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1D1030 高活性炭素繊維利用のフェンスによる沿道NOx濃度の削減 : 通風性とNOx除去反応性の効果(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- ACF(Activated Carbon Fiber)装着フェンスによる沿道NOx濃度の軽減--通風性と除去反応性の影響評価
- 2F1040 高活性炭素繊維を装着した通風式フェンスの沿道大気浄化性能に関する実験的研究(1) : パネル型フェンスのNO_x除去性能(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1D0942 ACF(高活性炭素繊維)装着フェンスの沿道NOx除去性能に関する実験的検討(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- 1D0954 風洞実験による沿道環境対策用ACF(高活性炭素繊維)ユニットのNOx除去性能評価(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- P302 風洞実験による高活性炭素繊維の流体力学特性評価
- 1C02 環境大気中の塩化水素、硝酸ガス測定用のパッシブサンプラーの開発
- 東アジア地域を対象とした酸性大気汚染物質の文化財および材料への影響調査(第7報)(文化財材料と環境)
- F135 東京湾上空大気の現地観測と数値シミュレーション
- 東京湾上空の大気構造とCO_2濃度分布
- 東京湾上空の大気環境計測
- スキャニングライダーによるSPM濃度の空間分布計測に関する基礎的研究
- 特集 都市の熱収支--熱・水・CO2フラックスの長期連続観測を例に
- 2F1006 大気浄化向け高活性炭素繊維ユニットの耐久性評価(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1D1006 沿道大気浄化向け活性炭素繊維ユニットの最適化(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- P205 植生の影響を考慮した都市域のスタントン数に対する実験式の提案と都市エネルギー収支モデル(SUMM)の実都市への適用
- 高活性炭素繊維ACFによる局地汚染対策
- 中央分離帯の寺子屋から((6)移動発生源対策,3.1.3 手法から見た分野別研究,3.1 専門分野別研究,3.大気環境研究の新展開,創立50周年記念号)
- 2F0930 高活性炭素繊維ACFを用いた局地汚染対策(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1D1018 高活性炭素繊維を用いた局地汚染対策(1空間-2道路・沿道,一般研究発表)
- 代理表面を用いた乾性沈着機構の研究 : II.酸性およびアルカリ性水面,水面,乾き面によるガス状および粒子状物質の沈着過程の分画
- 2E0930 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究 : 窒素酸化物の吸着, 還元反応
- 2E1030 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究 (6) : 還元剤を用いた NOx の還元, 無害化の試み
- 2E1000 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究 (5) : NO の酸化反応、HNO_3 としての回収
- 1E1130 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究(4) : NO_2の不均化反応によるNO放出とNO除去技術
- 1E1115 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究(3) : NOx浄化に対する高活性炭素繊維と酸化チタン触媒の性能試験
- 2E0945 高活性炭素繊維を用いた環境大気浄化に関する研究 : 化学物質の吸着・除去
- 東アジアにおける水溶性エアロゾルの挙動
- 長距離移流物質による大気汚染の解析 - 樹氷に含まれる酸性物質の起源 -
- 1F1330 大陸からの移流に伴う大気汚染物質の観測 : 黄砂砂じんによるサンプリング時のアーティファクトの影響について
- 2C1145 標高が異なる九州北部2地点における春季の大気汚染物質観測 : 平野部及び森林山頂付近における大気汚染物質の動態
- 大気境界層中の乾性沈着
- 2E1015 IGAC調査(6) : 1997年1月の五島および済州島でのエアロゾルデータの比較
- 2E1000 IGAC調査(5) : 長崎県五島及び福岡県太宰府市における冬季のガス, エアロゾル調査 : エアロゾルの粒径分布特性と酸性度及び化学形態
- 代理表面法および濃度法による乾性沈着フラックスの比較
- IGAC/PEACAMPOT観測時の五島および太宰府における大気エアロゾルの性状
- 乾性沈着の評価法と沈着機構に関する研究
- 代理表面を用いた乾性沈着機構の研究 : I. 乾, 湿面への乾性沈着量と揮散および科学的変質の影響
- 森林地域に沈着する二次生成粒子の化学形態評価
- 高活性炭素繊維(ACF)を用いた大気浄化技術 : I. ACFのNO_X浄化特性と強制採気による大気浄化技術
- 開発事例 高活性炭素繊維を用いた大気浄化技術 (特集 規制強化に対応する排ガス浄化材料)
- 高活性炭素繊維(ACF)を用いた大気浄化技術 : II. 自然風を駆動力とするACFを用いたNO_x除去システムの開発
- 2S1300 大気汚染の野外観測からその対策をめざして(学術賞(斉藤潔賞)受賞記念講演)
- 1E1506 夜間のオキシダント濃度変動による越境大気汚染の評価(5物質-1ガス状物質,一般研究発表)
- 2F0939 2012年1月中旬に観測されたPM_高濃度イベントにおけるイオン成分の挙動(5物質-2粒子状物質,一般研究発表)
- 3C0926 高活性炭素繊維(ACF)を用いた環境大気浄化に関する研究(28) : 内気循環モードにおける車内のVOCs汚染の実態とACF施工による削減効果(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 3C0913 高活性炭素繊維(ACF)を用いた環境大気浄化に関する研究(27) : 空気流れを利用したACFによる車内浄化技術とそのNOx削減効果(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 3C1013 中国北京市における高活性炭素繊維(ACF)の大気浄化効果(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 1F1152 福岡における黄砂観測時のPM_中多環芳香族炭化水素類の濃度上昇について(5物質-2粒子状物質,一般研究発表)
- 3C1000 高活性炭素繊維(ACF)を用いた環境大気浄化に関する研究(30) : ACFと活性炭のNOx捕捉能の比較(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 3C0939 高活性炭素繊維(ACF)を用いた環境大気浄化に関する研究(29) : 車内の空気流れと最適なACF施工部位の検討(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 3C0900 高活性炭素繊維(ACF)を用いた環境大気浄化に関する研究(26) : 外気を遮断した内気循環モードにおける車内NOx汚染の実態(1空間-2道路沿道,一般研究発表)
- 大気汚染の野外観測からその対策をめざして