毒餌適用法により採集されたハエ成虫の季節的消長
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
京都市内の2地点(A, B採集地)において, DDVP, イソプロピルアルコールならびに糖蜜をそれぞれ0.5, 1.2, 10%含んだ毒餌を用い, 1962年1月から1年間にわたり, ハエ成虫の周年採集を実施した.また, B採集地では魚肉を誘餌とした金網トラップによるハエ成虫採集もあわせておこない, 毒餌法によるハエ成虫採集の適合性について検討した.1) A採集地は京都市上京区京都府立医科大学内の実験用家兎飼育室, B採集地は京都市右京区樫原町にある一農家の庭である.毒餌法は連日実施し捕殺されたハエは毎月, 上, 中, 下旬の3旬に分けて, 種類別に個体数を集計した.金網法は24時間採集で, これを各月1〜3回, 計28回実施し, 各採集日毎に採集されたハエを種類別に分けて個体数を算えた.2) A採集地の毒餌法では12種, 計14, 899個体が採集され, そのうちヒメイエバエが95.7%を占め, 次いでオオイエバエ(2.1%)が多く採集された.B採集地の毒餌法では18種, 計16, 711個体が採集され, そのうちヒメイエバエ, オオイエバエ, ヒツジキンバエがそれぞれ33.0%, 32.8%, 13.8%を占めた.B地点の金網法では21種, 計2, 515個体が採集され, 最も多かつたのは, ケブカクロバエ(21.3%), 以下, オオクロバエ(13.0%), センチニクバエ(12.4%), ヒツジキンバエ(12.1%), その他の順であつた.3) ヒメイエバエは毒餌法によりA採集地では2月下旬から11月中旬まで, B採集地では3月中旬から11月中旬まで採集されたが, 金網法では毒餌法の場合より採集された期間が約2ヵ月短かつた.金網法で本種の採集が皆無の日に毒餌法では, しばしば本種が採集されたが, このような傾向はオオイエバエについても認められた.4) ヒツジキンバエ, ヒロズキンバエ, センチニクバエは金網法によつて, それぞれ, 4月中旬〜12月中旬, 5月下旬〜11月中旬, 4月下旬〜11月下旬の間, 採集されたが, 同じB地点の毒餌法ではいずれの種も金網法におけるより採集期間が約1〜2.5ヵ月短かつた.5) ケブカクロバエはB採集地において, 冬季間, 少数ながら採集され, 3月以降採集数が増加したが, 盛夏はいずれの採集方法によつても採集されなかつた.オオクロバエはケブカクロバエとよく似た傾向を示した.6) 今回用いた毒餌はヒメイエバエ科ならびにイエバエ科の成虫に対しては四季を通じて強い誘引性のあることを認めたが, クロバエ科に対しては冬季ならびにその前後の低温期には金網法よりも誘引性が低く, また, ニクバエ科の成虫に対しては四季を通じて誘引性の低いことが認められた.7) 以上の成績を通覧すると, 今回用いた毒餌は単一の臭物質を含んでいたために, 採集種の構成に大きいかたよりが生じたと考えられるが, 今回の臭物質の他に他種の臭物質の適当量を加えることにより, 採集種のかたよりは軽減出来ると考えられる.一方, このような化学的に純粋な臭物質をハエ成虫採集に用いる場合の大きな利点は, 一定の刺戟質または誘引強度をもつた誘引源が得られることである.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1967-03-25
著者
関連論文
- グアテマラ産 Simulium ochraceum 成虫の室内飼育
- ハマダライエカ群の形態学的研究 : 第 1 報翅の斑紋と翅脈相
- 京都市におけるワモンゴキブリ, クロゴキブリならびにチャバネゴキブリの駆除成績 (続報)(第 19 回大会講演要旨)
- フタオクロバエの生活史について : I. 京都市附近における本種の周年世代推移(第 15 回大会講演要旨)
- 42 ブユの走査電子顕微鏡的研究 : 第 2 報幼虫体表の諸毛
- 尿道から排出されたハエ幼虫
- ブユ駆除のため殺虫剤を投入した河川における薬剤の分布状況について (予報)(第 15 回大会講演要旨)
- 京都市附近における蚊の生態学的研究 : (I) 墓地及び竹林内微陸水域における蚊幼虫相の遷移について
- 下水溝などに散布した Nankor 乳剤の蚊幼虫に対する効果について
- ブユの走査電子顕微鏡的研究第 3 報 : 日本産 4 亜属 8 種幼虫の腹部背面毛
- ブユの走査電子顕微鏡的研究第 2 報 : 日本産 6 種幼虫の腹部背面毛
- 毒餌適用法により採集されたハエ成虫の季節的消長
- ケブカクロバエの産卵にともなう卵巣の形態変化について (第 18 回大会講演要旨)
- 京都産チカイエカについて第 2 報(第 17 回大会講演要旨)
- 京都附近に分布するケブカクロバエの各種殺虫剤に対する感受性について(第 16 回大会講演要旨)
- 各種殺虫剤の魚類に対する毒性ならびにブユ幼虫に対する殺虫効果について(第 16 回大会講演要旨)
- 京都附近におけるハエの生態学的研究 : IV. 毒餌適用法により捕集されたハエの季節的消長(第 15 回大会講演要旨)
- グァテマラ産ブユの走査電顕による研究 : 第 1 報 6 種幼虫の腹部背面毛
- ブユの走査電子顕微鏡的研究 : 第 4 報日本産ウマブユ幼虫の口器
- ブユの卵巣発育(予報)
- 蚊の走査電子顕微鏡的研究第 4 報 : 日本産ヤブカ 3 種の卵表面像