イエバトにおける日本脳炎ウイルス長期感染成立の試み
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概要
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アルボウイルス越冬機序の1つとして, 鳥類体内におけるウイルスの長期潜伏感染が研究されているが, 日本脳炎ウイルスについては未だ知見がない.イエバトに日脳ウイルスJaGAr 01株を接種すると, 接種後5日間に亘つてほとんどのハトからウイルス血症が検出され, その最高値は10^<2.4>哺乳マウスICLD_<50>/0.02mlに達したが, 第2次的なウイルス血症は15週間の観察期間中発見されなかつた.抗体はウイルス接種後10日から14日で最高値に達し, その値はHIで80倍ないし160倍であつた.この値は以後次第に減少し, 周期的な変動は観察されなかつた.実験に使用した6羽のハトの内1羽の肝臓および腎臓からウイルス接種後39日にウイルスが検出されたが, 最高112日間飼育したその他のハトの内臓からはウイルスは見出されなかつた.また, 1羽のハトに日脳ウイルスを接種し, 接種後1日から5日目までコガタアカイエカとツバメヒメダニに吸血させ, 両者のウイルス感受性を比較した.コガタアカイエカはハト血中のウイルス濃度が10^<1.3>哺乳マウスICLD_<50>/0.02mlを超えると感染を受けたが, ツバメヒメダニの場合はダニ乳剤の哺乳マウス脳内接種およびヒヨコへの媒介実験共に陰性であつた.これらの結果は, 日本脳炎ウイルスはよく似た抗原性を持つWest Nileウイルスと異なり, 鳥類体内での長期感染を起しにくく, また鳥類寄生性のArgas属ダニへの感染も起しにくいことを示している.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1971-12-20
著者
-
高橋 三雄
予研衛生昆虫
-
高橋 三雄
Department Of Medical Entomology National Institute Of Health
-
Chunikhin Stanislav
Department of Virus Encephalitides, Rabies and Hemorrhagic Fevers, the Institute of Poliomyelitis an
-
Chunikhin Stanislav
Department Of Virus Encephalitides Rabies And Hemorrhagic Fevers The Institute Of Poliomyelitis And
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