アンボン島・セラム島(モルッカ諸島)のシダ植物の分類学的研究 : VI.イノモトソウ科
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概要
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1983年から1986年にかけて実施したセラム島・アンボン島(モルッカ諸島)の植物調査で収集した標本に基づく両島のシダ植物に関する研究の第6報である。本稿ではイノモトソウ科のミミモチシダ属とイノモトソウ属を扱った。前者は1種,後者は23種を含む。Pt. zippelliiは植物全体に毛状の鱗片が密生する。モエジマシダに近縁な種で石灰岩壁に着生する。Pt. moluccanaとPt. papuanaは外見がヒリョウシダに似て,葉が2mをこえる大型のシダである。両種は互によく似ていて,採集中は2種を採っているとは気づかなかったほどであるが,Pt. moluccanaの羽片基部が切形であるのに対し,Pt. papuanaでは楔形であるので容易に区別できる。形態が面白いのがPt. warburgiiである。葉は基部で1回羽状複葉になるが中・上部は深裂する程度で,葉脈も多角形の網目からなる網状脈であるのでヘラシダ属のジャコウシダに似ている。Pt. schlechteriの葉はナチシダ的な掌状葉であるが,羽片の先端近くに不定芽がつく点で,イノモトソウ属の中では特異である。本稿では3新種,1新亜種を記載した。Pt. tarandusは葉が著しい2型を示し,石灰岩上に着生する。Pt. mertensioides subsp. polylepisはオオバノハチジョウシダに葉の感じが似た種の亜種で,葉柄に鱗片が密生することで識別される。Pt. lepidopodaはナチシダ類の1種であるが,褐色(生時は白色)鱗片が密生し,葉軸がいぼ状突起のためにごつごつしているのが特徴である。山地斜面のやや明るい林下に生える。Pt. pediformisはナチシダに近いPt. tripartitaに非常によく似た種で中部マレシアに比較的広く分布しながら,Pt. tripartitaと混同されてきた。この種とは小羽片の切れ込みが浅く,側糸が数細胞からなる点で区別できる。日本にも分布する種としては,モエジマシダ,ホコシダ,オオアマクサシダ,オオバノハチジョウシダの広分布種があげられる。そのうち,モエジマシダはしばしば川床の岩上に生えていた。
- 日本植物分類学会の論文
- 1990-12-25
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