カリマンタンで採集したシダ植物(2)
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概要
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本報では10科29属164種を記録するが,更に詳細な検討を必要とするものも多い。 シシラン科(3属15種) タキミシダ属特にA. callifolium群は分類が困難で満足できる研究はない。ここでも仮同定にとどめた。A. vittarioidesにあてたものはブラヤン川岸の岩上に生育する渓流沿い植物で,シシラン属に非常に似る。典型的なA. vittarioidesとは葉幅・ソーラスで異なる。シシラン属のV. angustifoliaとV. longicomaの葉は共に狭長でよく似るが葉質・鱗片などで異なる。 イノモトソウ科 3属11種を記録する。ミミモチシダ属はマングローブ林の発達する河口域に生育し,Stenochlaenaは道路沿い灌木・林縁・疎林のclimbing fernである。イノモトソウ属の殆んどは林内・林縁で採集したが,P. ensiformisは橋下で,外来種と考えられるP. ligulataは開けた林道沿いで採集した。 チャセンシダ科(1属24種) オオタニワタリの仲間はHOLTTUMの最近の研究もあるが分類が難しい。採集品のうち葉基部が幅広いものがある。A. dichotomumとA. subaquatileは渓流沿い植物で前者は標高1000mの川岸に,後者はブラヤン川岸に生育する。 ツルキジノオ科(4属12種1変種) この科についてはHOLTTUM・HENNIPMANの報告が出た(Flora Malesiana II. 1巻-4号。1977年)。琉球に分布するオオヘツカシダは分布も変異も大きい。カリマンタンでも羽状複葉の個体と狭被針形の単葉のものを採集した。後者はブラヤン川の渓流沿い植物で幼葉もみつかった。 オシダ科(12属32種) 南カリマンタンの山地でタイワンヒメワラビ,近縁のDiacalpeとStenolepia,Polystichum gemmiparum,Didymochlaena,Ctenitis vilisなどがみつかる。ナナバケシダ属は低地の熱帯降雨林に生育し種数が多い。 ヒメシダ科(1属37種) この科はマレーシア地域に多様な種が分化・分布し,最近のHOLTTUMの論文を参考にしても同定できない種が多く,分類上興味深い新種と思われるものもある。T. merrillii,T. hosei,T. salicifoliaは渓流沿い植物である。 メシダ科(2属25種) ナンゴクシケチシダはカリマンタン新記録でボルネオでは他にキナバル山にもある。ヘラシダ属も熱帯降雨林で多様に分化している。新種D. squarrosumを記載する。
- 日本植物分類学会の論文
- 1980-11-10
著者
-
加藤 雅啓
Department Of Botany National Museum Of Nature And Science
-
岩槻 邦男
Department of Botany, Faculty of Science, Kyoto University
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