タイ国産シダ類新知見5
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概要
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タイ国のシダ植物について得られた新知見を気付き次第抜き書きしてきたが、日本との共通種がいくつか貯まってきたので、5回目までの分をまとめて以下に要約してみたい。タイ国にこれまで知られている550種程のシダのうち、日本と共通するものは80種近くなるが、ここではこのシリーズで扱ってきたものだけを取り上げることにする。ノキシノブ属を旧世界のものに限定するか新世界のものまで含めて考えるかにはまだ一定した意見はない。しかし両者を区別する指標形式としては葉面の鱗片の構造の微細な差異が認められるだけで、COPELANDが詳細に述べているように、属の階級で弁別するほどの系統的な差異は認められないようである。だからこの属の学名にはPleopeltisを当てるのが妥当と思われる。コバノイシカグマはインドシナや中国南部にも知られていたものであるが、タイ北部の最高峰インタノン山の山頂近く(2500m)で採集されている。サンショウモ属のものとしてはバンコクをはじめタイ中央部の平野のクリークにはS.Cucullataが非常に多い。サンショウモはむしろ暖帯性のものであるが、タイ国でも唯一度西タイのラチヤブリで採られている。タイ国半島部は南下するにつれて植物分布の上からはマラヤとほとんど共通になってくる。タイ最南部の3つの県、パツタニ・ヤラ・ナラシワトで採られているシダを列記してみたら、マラヤに記録されていないものはナチシダ位のものだった。この辺に生えているもので日本にもあるものといえば、ヨウラクヒバ・ミズスギ・コブラン・ツルホラゴケ・オニホラゴケ・キクシノブ・ホウビシダ・アマモシシランなどである。
- 1969-07-20
著者
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岩槻 邦男
東京大学理学部
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岩槻 邦男
Department of Botany, Faculty of Science, Kyoto University
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田川 基二
Department of Botany, Faculty of Science, Kyoto University
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