バングラデシュ氾濫原農村の屋敷地(バリ・ビティ)における村人の植物の利用について
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概要
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バングラデシュのジョムナ水系の氾濫原上にあるドッキンチャムリア村(D村)で, 1992年から1995年にわたり屋敷地(バリ・ビティ)における植物の利用と管理に関する調査を行った.村内の12サンプル世帯への聞き取り及び17世帯が居住するサンプル屋敷地塊(チャクラ)での詳細なマッピングにより有用植物の植生を調査するとともに, その利用と管理について聞き取り調査を行った.D村の屋敷地では, 125種〔多年生植物82種, 一年生(または一年生的に管理される)43種〕の植物が認められた.食用70種, 薬用48種, 飼料8種, 家畜の薬用8種, 木材(建材, 家具等)24種, その他道具の材料17種, 土止め3種(とくに土止めに適しているもの)の他, 生け垣, 子供の遊び道具, 鑑賞用等その利用用途は多岐にわたる.また, 同一の植物が多岐の用途で利用されており, 植物全体で一種につき平均2.5通り, 多年生植物で2.8通りの利用用途がみられた.とくにD村で普通に見られる在来の植物でその多目的性は高く, 村人の生活との結びつきの深さを示唆している.D村の屋敷地は, 氾濫原という水文条件下で, 土盛りすることにより唯一湛水を免れる土地を提供する人工的な空間である.この限られた空間の中で, 村人は各植物の特性を把握し, 各部位を成長の各段階に合わせて利用する体系, 在地の技術を作りあげてきた.
- 1999-12-01
著者
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