オオムギ野生種(Hordeum spontaneum C.Koch.)における開花受粉性の遺伝子分析
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概要
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オオムギ野生種H.spontaneumのもつ開花受粉性の遺伝子分析および三染色体分析を行った.閉花受粉性のミサトゴールデンと開花受粉性のH.spontaneumのF_1世代は, 閉花受粉性であった.ミサトゴールデンにF_1を戻し交配したB_1F_1世代およびF_2世代は, 閉花受粉個体と, 開花受粉個体が3 : 1の比で分離した.B_1F_1世代で開花受粉個体が分離したことと, F_2世代の開花受粉性個体が期待値より多く分離したことから, 閉花受粉性を開花受粉性に変える劣性の変更遺伝子(mm)が存在すると仮定した.開花受粉性-閉花受粉性の遺伝子対をcl-Clとし, 開花受粉性の変更遺伝子対をM-mとした.仮定に基づけば, F_1世代の遺伝子型はClclMmであるので, 閉花受粉性となる.F_2世代の表現型の期待分離比は, 開花受粉性 : 閉花受粉性=3 : 5となり, B_1F_1世代の期待分離比は, 開花受粉性 : 閉花受粉性=1 : 3となる.実際に, B_1F_1世代の分離は, 1 : 3の期待分離比に適合していた.また, F_2世代の個体分離比は, 3 : 5の期待分離比に適合していた(χ^2=0.67,0.25<P<0.50).以上の結果から, H.spontaneumの開花受粉性は, 1個の劣性の開花受粉性遺伝子に支配されており, ミサトゴールデンは, 閉花受粉性を開花受粉性に変える劣性の変更遺伝子をホモ(mm)でもっているが, その遺伝子は閉花受粉性へテロ(Clcl)の時, 作用すると推論される.三染色体とミサトゴールデンの三染色体分析では, 第1染色体の三染色体個体(Bush)と交配した後代だけが, 開花受粉性に偏った残存葯数を示した.その他の組合せでは, すべて閉花受粉性に偏っていた.したがって, 開花受粉性遺伝子が, 第1染色体に座乗すると結論した.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1998-12-01
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