ヒト大脳視覚皮質における運動情報の統合過程

概要

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本研究の目的は、運動知覚の空間比較過程と神経機構との対応関係を調べることである。この目的を達するため、運動の同化錯視事態における脳活動を機能的MRIによって測定した。刺激は誘導刺激と被誘導刺激からなり、誘導刺激は上下往復運動する輝度変調縞であった。被誘導刺激は、フリッカする輝度変調縞と、誘導刺激と逆方向に運動する輝度変調縞の2種類であったが、知覚される運動は物理情報と逆転し、それぞれ上下往復運動とフリッカであった。被誘導刺激の変化に対応してfMRI信号の変化が見られた脳内部位は、後頭葉側頭中部のMT+/V5野、後頭葉背側のV3/V3A野、下頭頂小葉であった。また、脳活動の増加は、従来の知見に反し、刺激の運動が知覚されるときではなくフリッカして見える時であった。これらの結果は、MT+/V5野(とその関連領域)は運動知覚の空間比較に重要な役割を果たすこと、MT+/V5野の活動が時間的キューによる図地分化に関わる可能性を示唆するものである。
社団法人電子情報通信学会の論文
1999-06-18