S-4 4. 顕微蛍光測光法
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概要
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顕微蛍光測光法は10^<-12>以下の微量な物質を個々の細胞レベルで, きわめて短時間に測光しうる方法として広く分子生物学・医学への応用が急速に開発されつつある。細胞核DNAの定量(pararosaniline, acriflavine, cresylviolet, berberine sulfate, auramin OなどのSchiff-type dyeによるFeulgen染色, Hoechst 33258 ethidium bromideなどによるDNA染色)をはじめとしてヘモグロビンなどの特殊蛋白(光化学的に蛍光性のポルフィリンに変換), アミノ酸(Ninhydrin-schiff反応や特定のアミノ酸残基に蛍光物質を付加), 酵素, ホルモンを含む蛋白(蛍光抗体染色), 多糖類(PAS反応)などの定量が実用化されはじめている。その他にDPNHの自家蛍光による細胞内酸素濃度の定量や細胞膜蛍光強度変化の測定などによる細胞の動的機能変化の解析が進んでいる。顕微蛍光測光法は原理的に単純で測光装置も簡単であるが, いづれの物質を定量する場合にも共通した二つの厄介な問題がある。それは目的とする蛍光の減衰と非特異蛍光の存在である。しかし幸いなことに蛍光物質によっては励起光で長時間照射すると完全に安定化する現象が見出された(後照射法)。十分に照射した標本上ではバックグランドの非特異蛍光は完全に消失し安定化した特異蛍光を再現性をもって測光できるようになる。一般にこれまで蛍光は不安定なものであるという考えが通念となっているが, 上に挙げた蛍光色素のほとんどが驚くほど安定な蛍光をもち強力な励起光照射に耐える。蛍光の安定性は色素固有の性質に関係する一方蛍光物質が(1)高分子と強固に結合している場合(2)安定した環境中に固定されている場合には著しく増強する。蛍光減衰が速いとされていたFITCでも, 標本をメタノール後固定・キシロール置換後に硬化性樹脂等で封入すると極めて安定化し, 一年半以上, 室温明所に保存した標本でも強い蛍光を発し観察中の蛍光減衰はほとんどない。今回は以下に述べる実例をもとに安定蛍光を利用した顕微蛍光測光法進歩の現況と将来の発展の可能性を探ってみたい。〔A〕DNA-蛋白同時定量法 : pararosaniline/acriflavineによるFeulgen/Ninhydrin-Schiff重蛍光染色法, 定量性の検討と子宮癌の蛍光診断への応用〔B〕DNA-グリコーゲン同時定量法 : acriflavine/pararosanilineによるFeulgen/PAS重蛍光染色法の定量性検討と腫瘍細胞内グリコーゲン定量〔C〕DNA-ヘモグロビン同時定量法 : 定量性の検討と赤芽球細胞の動態解析への応用〔D〕定量的蛍光抗体法 : 定量的蛍光抗体染色と測定条件の検討・蛍光抗体-DNA蛍光染色による抗原量/DNAの同時定量とその応用
- 1978-11-01
著者
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