膀胱癌と基底膜特異蛋白 laminin

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ヒト膀胱移行上皮癌とBBNにより誘導したラット膀胱移行上皮癌とにおける基底膜の変化を通常の透過電顕法と、基底膜特異蛋白lamininの組織化学的染色とを用いて観察した。lamininの観察には凍結切片を用い、peroxidase抗体法の間接法を行なった。光顕レベルでの観察とともにosmification後樹脂包埋し、電顕レベルでの観察も行なった。正常移行上皮の基底膜は電顕レベルで見ると、他の基底膜と同様にlamina lucida、lamina densaの2層より構成され、lamininはlamina lucidaの最も上皮側に存在していた。癌においてはこれらの構造は次第に変化し、特に深く浸潤するものの場合、またリンパ節転移巣においてはその変化は著明であるが、lamininの存在様式は常に一定であることがわかった。即ち、lamina densaは断裂、上皮よりの解離、多層化、膨化など種々の変化を示すが、一方lamininは常に上皮に接して存在し、周囲組織より癌細胞を境している現象が見出された。このことが何を意味しているのかは未だ明らかではないが、移行上皮癌細胞の増殖、浸潤において、その速度に応じたlamininの産生が行なわれていると考えられ、これまでに知られているlamininの生物学的活性より考えて、癌の浸潤、転移にlamininが促進的に働いている可能性を示唆するものと考えられた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文

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