腎盂尿管癌におけるc-erbB-2,p53遺伝子産物の過剰発現とKi-67による細胞増殖動態の検討

概要

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(目的)腎盂尿管癌の進展や増殖における癌遺伝子c-erbB-2と癌抑制遺伝子p53の意義について検討した。(対象と方法)47症例についてそれぞれの遺伝子産物の過剰発現の有無を組織化学的に観察した。同時に細胞増殖能の指標としてKi-67抗原の発現も検討した。(結果)c-erbB-2遺伝子産物の過剰発現は53%の症例で陽性であったが,異型度などとの関連は明らかではなかった。p53については全体で62%の陽性率で,異型度別にはG1+G2:48%,G3:80%,深達度別にはTa+T1:38%,T2-4:81%と,それぞれ高異型度群(p<0.05),高深遠度群(p<0.01)で有意に陽性率が高かった。Ki-67標識率との関連はc-erbB-2については明らか結果は得られなかったが,p53陽性例は同陰性例に比し有意に標識率が高かった(p<0.01)。ただし病理所見別に細分して見た場合,有意差を認めたのは低異型度群(G1+G2)においてのみであった(p<0.05)。一方高異型度症例はp53陰性でも低異型度症例を超える高いKi-67標識率を示した。(結論)腎盂尿管癌の進展におけるc-erbB-2の役割は大きくないと考えられたが,p53の変異は腎盂尿管癌の進展に深く関わっており,特に低異型度症例ではp53の変異が癌の増殖能と強く関連していることが推測された。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1997-06-20