浸潤性膀胱癌患者における膀胱全摘術と膀胱温存療法の予後とQOLの比較
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概要
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(目的)われわれは膀胱全摘術あるいは膀胱温存療法を施行された浸潤性膀胱癌患者について,その転帰とQOLを比較検討した.(対象と方法)対象は4つの施設から登録されたT2またはT3,N0,M0の浸潤性膀胱癌120例である.温存療法を計画された患者は,動注化学療法と放射線照射による導入療法後に温存可能かどうかが判断された.QOL質問票にはEORTCのQLQ-C30(日本語版)を用いた.(結果)120例のうち初めから膀胱全摘術が選択されたものが60例(予定全摘群),温存を計画したが腫瘍が残存したため全摘となったものが18例(温存全摘群),温存できたものが42例(温存群)であった.背景因子の比較では,予定全摘群では移行上皮癌以外の組織型やgrade3の組織所見が有意に多くみられた.また温存群では膀胱内に腫瘍の再発を認めたものが40%あったが,それ以外の部位への再発転移は認められなかった.QOLは全体的健康状態および身体的,精神的,認知的機能において温存群の方が良好な傾向がみられた一方,役割および社会的機能においては差がなかった.愁訴に関する比較では不眠と下痢が全摘群に有意に多くみられた.(結論)本検討は無作為割り付け試験ではないため,両群間の比較は不可能と考えられるが,T2またはT3,N0,M0の浸潤性膀胱癌においても,症例によっては膀胱温存療法が適応となることが示された.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1999-03-20
著者
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赤座 英之
筑波大学臨床医学系泌尿器科学教室
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小柳 知彦
独立行政法人労働者健康福祉機構釧路労災病院泌尿器科
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三木 誠
新宿石川病院
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小柳 知彦
北海道大学医学部泌尿器科学教室
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篠原 信雄
北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科
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宮永 直人
筑波大学臨床医学系泌尿器科
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鳶巣 賢一
国立がんセンター中央病院 泌尿器科
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三木 誠
東京医科大学泌尿器科学教室
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篠原 信雄
北海道大学
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樋之津 淳子
筑波大学臨床医学系泌尿器科
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辻野 進
東京医科大
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三木 誠
東京医大
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辻野 進
東京医科大学
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宮永 直人
水戸済生会総合病院泌尿器科:筑波大学臨床医学系泌尿器科
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赤座 英之
筑波大学臨床医学系泌尿器科
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新美 三由紀
筑波大学臨床医学系泌尿器科
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三木 誠
東京医科大学
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小柳 知彦
北海道大学
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宮永 直人
筑波大学臨床医学泌尿器科
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