腎癌における制癌剤効果増強について
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概要
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(背景と目的)腎細胞癌は一般に化学療法に充分な反応がみられないが,その原因としてP-glycoprotein(P-gp)の発現による多剤耐性が注目されている。本検討で,われわれはP-gp耐性克服薬剤によるヒト腎細胞癌に対する制癌剤効果の増強をin vitroで検討した。(方法)P-gp高度発現ヒト腎細胞癌由来培養株ACHN/ADMおよび28例の腎細胞癌患者から手術的に摘出した臨床検体を対象として検討した。制癌剤としてはadriamycin(ADM)とvinblastinを使用した。P-gp耐性克服薬剤としてはverapamil(Ver)およびcyclosporin A(CsA)を用いたが,それぞれの濃度はACHN/ADMの発育に影響を与えないVer2.5μg/ml,CsA0.5μg/mlとした。また,制癌剤感受性試験はATP法にて行った。(結果)ACHN/ADM株に対してADMではVerおよびCsAによりそれぞれ1.5倍,6倍の制癌効果増強を認めた。また,VLBにおいてもさそれぞれ7倍,11倍と制癌効果の増強が同様にみられた。臨床検体に対する制癌剤感受性試験ではP-gp耐性克服剤の併用の有無に関わらず制癌剤に接触後ATP法で50%以下の細胞活性を示した場合,その薬剤に対して感受性有りと判定した。Ver併用を検討した臨床検体14例に対して制癌剤は単独ではそれぞれADMで3例,VLBで1例の感受性しか示さなかったものの,Verを併用したところADMで6例,VLBで4例が感受性を示した。CsA併用を検討した他の臨床検体14例では制癌剤単独ではADMで3例感受性を示し,VLBでは感受性無しであったが,CsA併用でそれぞれ9例,6例の感受性を示した。(結論)この検討により,腎細胞癌においてはVerまたはCsAを併用することによりADMやVLBの制癌効果が増強すると考えられ,P-gpによる多剤耐性の腎細胞癌に対するこれらの臨床応用に期待が持たれた。
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1996-08-20
著者
-
江原 英俊
岐阜大学医学部泌尿器科前立腺癌研究グループ
-
河田 幸道
岐阜大学医学部泌尿器科
-
出口 隆
岐阜大学医学部泌尿器科
-
山田 伸一郎
岐阜大学医学部泌尿器科学教室
-
河田 幸道
岐阜大学医学部
-
岡野 学
岐阜大学医学部泌尿器科学教室
-
川本 正吾
掛川市民病院
-
岡野 学
西美濃厚生病院泌尿器科
-
山田 伸一郎
岐阜市民病院 泌尿器科
-
山田 伸一郎
岐阜大学医学部
-
根笹 信一
大垣市民病院泌尿器科
-
川本 正吾
岐阜大学医学部泌尿器科学講座
-
玉木 正義
岐阜陰茎癌研究グループ
-
根笹 信一
岐阜大学医学部泌尿器科学教室
-
玉木 正義
岐阜大学医学部泌尿器科学教室
-
江原 英俊
岐阜大学医学部 泌尿器科
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