前立腺全摘除術後の尿失禁 : 尿流動態検査および尿道造影による検討

概要

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前立腺全摘除術後息者10例について尿流動態検査と側面尿道造影にょり術後の尿失禁の機序と対策について検討した.10例の病理組織学的深達度はpT_25例,pT_33例,pT42例であった.尿失禁の有無及び程度は,尿失禁無しが2例,軽度5例,中等度2例,高度1例であり,pT_3またはpT4の群はpT_2群よりも尿失蔡の程度が高かった(p<0.05).尿道内圧測定におげる機能的尿道長と最大尿道閉鎖圧は,尿失禁無し又は軽度の群はそれぞれ平均2.04cm,42.3cmH_2O,尿失禁中等度以上の群ではそれぞれ平均1.37cm,17.3cmH_2Oで両群間に有意差を認めた(p<0.05).側面尿道造影において膀胱尿道移行部の恥骨下縁からの高さと膀胱頸部の前後壁が成す角度(膀胱閉鎖角)は尿失禁無しまたは軽度の群はそれぞれ平均1.2cm,75.3度,尿失禁中等度以上の群はそれぞれ平均0.37cm,42.7度で両群間に有意差を認めた(p<0.05,p<0.01).即ち,尿失禁中等度以上の群では機能的尿道長と最大尿道閉鎖圧の両者が低下し,また膀胱尿道移行部が下降し,楔状に切り込む形を呈した.以上より,前立腺全摘除術後の尿失禁の軽減には局所浸潤癌を除外し,膜様部尿道や膀胱頸部を十分保存し,膜様部尿道周囲の過剰な剥離を避けることが重要と思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1993-08-20