腸管を利用した尿路の感染防御機構 : 尿中滲出白血球のcell populationと細菌増殖について

概要

論文の詳細を見る
尿路に腸管を利用した22例(腸管利用群と略)と,通常の複雑性尿路感染症21例(対照群と略)の尿中滲出白血球の動態とcell populationを比較検討した。腸管利用群では,尿中に好酸球が多く滲出しているが,細菌数の増加に伴い好中球が増加し,感染が起こった場合は好中球が中心的役割を果たしていた。尿中分泌型IgA,IgG,IgM濃度と尿浸透圧が両群間に有意差がみられたので,末梢血由来多核球を用いて両群尿中での細菌貧食能を検討した。全体では両群問に有意差はなかったが,腸管利用尿路由来の尿浸透圧は貧食能に最適な範囲にあり,貧食能はIgG濃度と相関し,IgGがオプソニン作用を持つ可能性が示唆された。また通常尿路尿中では,変化の大きい浸透圧が貧食能に強い影響を与えていた。次いで前回の検討で分離頻度に差のみられたProvidencial, Steptococcis, P. aeruginosaの他, E.coilの両群尿中(pHを一定)での細菌増殖について検討した結果,4菌種の両群尿中での増殖能にはいずれも大きな差はなかった。このことから前記細菌の分離頻度の差は,尿の性状ではなく粘膜への定着性などが関与しているものと考えられた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1991-09-20