手術標本の病理学的検索で発見された前立腺癌の治療法とその成績

概要

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手術で偶然発見された前立腺癌(stage A)につき,その生物学的特性を病理標本より推定群別し,以下に示す治療方針をたてた。1)限局性癌(stage A1),分化型で断端陰性のものは治療を行なわない。2)瀰慢性癌(stage A2)で未分化型は,直ちに抗男性ホルモン療法を行なう。3)中間のもの(A1分化型断端陽性,A1未分化型,A2分化型など)は第1群と同様にあつかい治療せず経過を観察し,明らかに癌の進行のみられた時にホルモン療法を開始する。この方針により19例のA癌を治療した。無治療10例,ホルモン療法9例(うち途中開始2例)で,A癌全体の5年および10年実測生存率は62.2%,29.9%と同時期のB,C,D癌の58.0%,32.2%とかわらなかつた。A癌の5年実測生存率は細胞分化別にみると分化型(11例)81.8%,未分化型(8例)41.7%で,断端陰性(7例)66.7%,陽性(12例)58.2%であつた。治療別では無治療群(10例)では100%,治療群(9例)では38.4%であつた。この結果はA癌が生存率からみて明らかに異質の2郡よりなりたつていることを示している。すなわちA癌の半数をしめる限局性(A1)分化型癌はその後の治療を必要としないと結論される。一方瀰慢性(A2)未分化癌は抗男性ホルモン療法のみでは不充分で,さらに積極的治療法を行なうべきであると考えられる。
1982-10-20