ヒト射精液中の乳酸脱水素酵素とそのアイソザイム

概要

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不妊を主訴として受診した症例を中心に射精液中LDH活性およびLDHアイソザイムが,妊孕能の指標の一つとなり得るかを検討した. (1)LDH活性と精子濃度は相関を示した(n=170,r=0.50,p<0.001)が,LDH活性と精子運動率の間には相関を認めなかった. (2)LDHx活性は精子濃度50×10^6/ml以上の症例では96.6%に認められたが,精子濃度10×10^6/ml未満の症例では52%に認められ,無精子症例では全例にLDHx活性を認めなかった.また精子運動率が高くなるにつれ,LDHx活性を認める比率は高くなった. (3)LDH,とLDH_2は精子濃度と相関を示さなかったが,LDH_3,LDH_4およびLDH_5は相関を示した.特にLDHxは精子濃度と高い相関(r=0.60,p<001)を示した.一方,LDHアイソザイムと精子運動率の間には相関を認めなかった. (4)精巣と精巣上体頭部のみにLDHx活性を認め,精管結紮手術後無精子症となった精液中にはLDHx活性を認めなかった. (5) 精子浮遊液中に出現してくるLDH活性はすべてLDHxであった. (6) 精索静脈瘤に対して手術を施行した所,術前LDHx活性を認めなかった症例中,術後精子数の増加をみた5例,全例に術鍬DHx活性を認めた.以上から射精液中のLDH活性とLDHx活性は妊孕能の指標の一つとして臨床的に有用であると考えられる.