水素同位体比から見たマグマの脱水プロセス : 雲仙1991年および富士山1707年噴火の例
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概要
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火山の噴火はマグマの脱ガス過程そのものである。脱水によってメルトの含水量が減少するとメルト中の水のspeciation (H_20分子およびOH基)が変化し, かつ水蒸気とメルトとの間の水素同位体分別も変化するために, 火山ガラスに含まれる水の濃度やそのD/H比は大きく変化する。流紋岩質火山の爆発的噴火による噴出物について含水量の低下とともに水素同位体比が急激に下がる例が知られている。本稿では1991-92年雲仙普賢岳および1707年富士山宝永噴火について噴出物の含水量と水素同位体比に基づいてマグマの脱水プロセスが考察された。雲仙火山ではマグマが地表近くに到達する以前にマグマに溶けていた大部分の水は失われており, ドーム直下の高粘性・高温の溶岩からの脱ガスは拡散によって行われ, 脱ガスの最終段階では含水量の低下とともに水素同位体比が増加したと解釈される。富士山1707年噴火のスコリア試料では, 噴火の末期に向かって含水量ならびに2価鉄/全鉄比の低下し, 水素同位体比が増加することが分かった。これはメルトが脱水する際に水の一部が2価鉄と反応し, H_2ガスになって系外に逃散したために水素同位体分別が生じたと解釈された。火山ガラスの含水量および水素同位体比の変化はマグマの脱ガス過程を見るのに非常に有効であるということができる。
- 日本地質学会の論文
- 1996-09-20
著者
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