中部九州は本当に南北に開いているか?
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
中部九州が沖縄トラフの北方延長部として, 年間10数ミリメートルの速度で南北に拡大しているという多田 (1984, 1985) の推論は, 西南日本の活構造の解析からは支持することはできない。中部九州は背弧側の「右横ずれ剪断帯 (瀬戸内剪断帯) 」の中に位置付けられ, 剪断帯中の雁行地溝群の発達は広域的な南北方向の引張の結果ではなく, 剪断帯中の局地的な剪断歪みの解消の結果であると判断される。地溝群の形成には火山活動が密接に関係しており, それは雲仙地溝にその典型を見ることができる。より複雑な地溝の形態を示す由布-鶴見地溝, 万年山-九重地溝群, 阿蘇地溝などは, 火山活動の場の複雑さ, 場の移動, または場の地質学的環境の違いとして解釈できる。九州中北部は, 活構造から見ると, 琉球弧の島弧・海溝系に起因する火山フロントの存在による影響は受けているものの, 西南日本弧に属していると結論できる。また, 沖縄トラフの雁行地溝群の形成も西南日本弧と同様に, フィリピン海プレートの斜め沈み込みによる琉球弧前弧スリバーの南西進運動に起因しているが, その現在の活動の中心は中・南部沖縄トラフに限られており, 沖縄トラフが中部九州に連続するという活構造上の証拠はない。
- 日本地質学会の論文
- 1993-06-25
著者
関連論文
- 兵庫県南部地震に伴って淡路島北西岸に出現した地震断層
- 地質調査所の近畿およびその周辺地域における地下水位観測結果
- 地質調査所の活断層モニタリング -データ転送・解析システム-
- 284. 北海道馬追丘陵下のブラインドスラストの評価
- 黒瀬川地帯およびその周辺地域の造構運動 : 構造地質
- 愛媛県西条市における中央構造線岡村断層のトレンチ発掘調査
- 82 兵庫県南部地震で淡路島北西岸に出現した地震断層の規模について(第四紀)
- 糸魚川 - 静岡構造線活断層系の最近の断層活動 - 牛伏寺断層・松本市並柳地区トレンチ発掘調査 -
- 283. 北海道馬追丘陵における後期更新世の地殻変動とその速度について
- 根来断層周辺地域における空中γ線探査(その1)
- 南海トラフ沿岸域、紀淡海峡友ヶ島において発見された津波イベント堆積物 : その予察的検討と今後の研究展望
- 1999年トルコ・イズミット地震の地震断層
- 1999年4月17日の山崎断層の地震(M3.9)前後における地下水位・地殻歪の変化
- 和歌山平野根来地区深層ボーリング調査から明らかになった平野地下の地質
- 花折断層近傍での地殻応力測定 (活断層モニタリング施設 花折・大原地区)
- 和歌山市北部における低位段丘堆積物中の姶良Tn火山灰と根来断層の平均変位速度
- 養老断層・柳瀬断層における反射法探査(速報)
- 衛星データと地質情報の重ね合わせによる1995年兵庫県南部地震被災地域周辺の地質的解釈
- 418 古液状化砂礫層の振動三軸試験結果と古地震動の推定 : 御母衣断層系トレンチ調査より
- 558 四国沿岸湖沼群に記録された津波堆積物
- 9 南海トラフ及び中央構造線の右横ずれテクトニクス
- 中部九州は本当に南北に開いているか?
- 西南日本弧のアクティブテクトニクス : 前弧スリバーの西進運動にともなう変形像
- 地質情報ネットワーク(GINet)の利用について
- 近畿およびその周辺地域における地震予知研究のための地質調査所による地下水位観測
- アンケート調査によって検出された地震活動に伴う伊東温泉の変化
- 469. 和歌山市西方海域における中央構造線活断層系の音波探査
- 四国中西部秩父帯の地質構造について : 構造地質
- 高知県横倉山北方の秩父帯北帯の地質構造 : 構造地質
- 岩国活断層系 : リーデル剪断実験と比較して求めた発達過程 : 構造地質
- 鎌倉市長谷小路周辺遺跡の液状化跡
- Trenching Study of Okamura Fault of the Median Tectonic Line Active Fault System at Saijo in August, 1988